桃色 15輪目 ページ16
そんな風に言われても、だからと言って私にどうしろと言うのか。
「どうしたら、いいの……？」
もう十八歳にもなるのに、幼い質問をしたと思う。けれど、それは率直な気持ちだった。
散々な自己嫌悪でひねくれて、あんなにも必死に想いを伝えてくれたブン太を傷付けて、挙句の果てに幸村君に諭されたことで間違いに気付いた私に、まだ選択肢はあるのだろうか。
いずれにせよ、もう諦めるしかないんじゃないか。ブン太は答えを何度も待ってくれているのに、私には好きだと伝える勇気なんてないし、これだけ待たせて今になって彼に飛び込むなんて、都合が良過ぎる話だと思う。
だからといって、このまま想いに答えずに居るのも違うと思うし、自己嫌悪の癖を直せばいいという問題でもないだろう。
あれこれ考えあぐねいて、それでもやっぱり私には彼の手を握る資格はないよね、とまた一つため息を重ねた。
「素直になればいいんじゃないかな。俺にさっき言ってくれたみたいに、Aだって自然体でいいんだ。そのままの君でいいんだよ」
幸村君の声が道しるべのように感じるくらいに心の雲を晴らしてゆくようだった。それと同時に僅かな涙が誘われた。
そんな私を見て、彼は少し困ったような微笑みを浮かべた。
「私、今更素直になってもいいと思う？」
背中を押して欲しくて、弱々しく震わせた呟きは、しっかりと彼に聞こえていたみたいだ。
「Aが伝えないと、一番悲しむのは丸井だ。だから、素直にならないといけないんだよ」
そしてやはり彼は、私を導いた。
「幸村君、ごめんね。あと、本当にありがとう」
理由の分からない涙は零れ落ちたけど、笑うことができたと思う。
あの日、ブン太と切原君の会話を聞いた時から、温度の落ちていた空気が、一気に温まるのを感じた。
「謝罪は要らない。ありがとう、だけ受け取っておくよ」
幸村君は、きっと否定するだろうけど、やっぱり彼は優しいと思う。相手を導く強い力がある。そして自分自身も導いているんだろう。厳しさも持ち合わせながら。
そういうところ、羨ましいなと思った。
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megumi(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます！登場人物達に寄り添ってお読み頂き、とても嬉しいです。沢山のお褒めの言葉と、作品を好いて下さり、ありがとうございます。これからも、執筆活動に勤しんでいきたいと思います！ (2021年3月5日 18時) (
レス) id: ba823ca860 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 他の作品と比べるのは野暮かもしれませんが、今まで読んだどの小説よりも心理描写が丁寧で登場人物に共感しまくりでした。きゅんきゅんしたり苦しくなったり感情の変化が忙しかったです。2つのエンドを見れたのも嬉しかったです。何回も読み直させていただきます。 (2021年3月5日 15時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - YUEMINさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて、作者はとても嬉しいです(*^▽^*)応援に応えられるよう、頑張りたいと思います (2019年10月21日 18時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)
YUEMIN(プロフ) - 完結おめでとうございます！楽しく読ませていただきました!!次回作も頑張ってください。応援してます。 (2019年10月21日 18時) (レス) id: 1af2bac581 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - ユッキーさん» いつも応援して下さり、ありがとうごさいました！沢山感じて頂き、嬉しく思います(^^)恋という感情は不思議ですよね。この作品を素敵と言って頂き、感謝です！ (2019年10月14日 7時) (レス) id: b41fbb72a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：megumi | 作成日時：2019年7月11日 22時
