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妹のような後輩 ページ8

朝の空気はまだ少し冷たかった

呪術高等へ向かう車の中で、粧は助手席に深く体を沈めていた

ハンドルを握っているのは猪野琢真

粧はシートに背中を預け、だらりと力を抜いたまま天井を見上げる

「…本当に行くの?」

朝一番の言葉がそれだった

猪野はちらりと横目で粧を見る

猪「借金返して、賃貸契約できるようになるまでは頑張れよ」

粧は小さくため息をつくと、コンパクトミラーを取り出す

前髪を指で整えながら、だるそうに言葉を続けた

「簡単に言うけどさ」

鏡越しに自分の顔を見つめる

「無理に働くのって、辛いの…」

猪野はふっと鼻で笑う

猪「お前の場合何してても、引きこもってても辛いだろ」

その言葉に、粧は口を閉じた

言い返そうとして――やめた

図星だったからだ

粧は鏡を閉じ、窓の外へ視線を向ける

流れていく街並みをぼんやりと眺めながら、車は高専へと近づいていった

やがて校門前に車は止まり、猪野が顎で外を示した

猪「ほら、降りろ」

粧はむすっと口を尖らせたまま、助手席のドアを開ける

しかしすぐ締め、猪野をチラ見する

猪「おい」

語気の強い一言に粧は眉間に皺を寄せて車を降りた

外に出ると、車の窓越しに猪野をじっと見つめる

――行け

猪野は手で追い払うジェスチャーをする

粧はそれを見て、露骨に嫌そうな顔をし、重い足取りで階段へ向かった

一段

二段

三段

四段

五段

そこまで登ったところで、粧は足を止めた

上を見上げれば、大きく立ちはだかる鳥居

くるりと向きを変え、階段を降り始めた

それを車の中から見ていた猪野の顔が引き攣る

窓越しに口を大きく動かした

は・や・く・い・け・や

声は聞こえないが、完全にそう言っている

粧はそんな猪野を見て口をへの字に曲げたまま、落胆した

再び階段を見上げて立ち尽くし

ふと、横に目を向けた

そこにあったのは、かなり古びたエレベーター

ガタガタしそうな鉄の扉

粧の口角が少し上がる

「いいもんみっけ」

迷うことなく、そっちへ歩いていく

その様子を車の中から見ていた猪野は、シートに体を預けながら大きくため息をついた

猪「…はぁ」

ぼそりと呟く

猪「お前のためなんだよ」

ハンドルに腕を乗せ、粧の背中を見つめる。

猪「一年は頑張ってくれ…一年だけ」

唯一の後輩

面倒で、だるくて、手のかかるやつ

それでも放っておけない

その背中を見送りながら、猪野はまた小さく息を吐いた

まるでーー

出来の悪い妹を送り出す兄のように

顔合わせ→←脅し



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作者名:はなり | 作成日時:2026年3月14日 11時

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