勘違い ページ31
笠「ちょっと新人?!」
鋭い声が背後から飛ぶ。
粧はビクリと肩を揺らして振り向いた。
笠井が立っていた。
騒ぎを聞きつけて、車から直接来たのだろう。
腕を組み、鋭い視線でこちらを見ている。
笠「なんの騒ぎ?」
粧は慌てて駆け寄った。
「笠井さん……!!」
大きく身振りを交えながら説明する
「まだ呪霊が残ってるんです!!」
息が少し上がっている
「それも一級相当が!!」
周囲の空気が一瞬で張り詰めた。
笠井の目が大きく見開かれる。
笠「……本当?」
そのまま振り返ると、迷いなく現場の奥へと歩いていった。
誰も止められない。
その背中を、粧は不安そうに見つめていた。
そして――
______10分後。
粧は、笠井の前に立っていた。
ぎゅっと両手を絡め、視線は床に落ちている。
空気が冷たい。
笠井がゆっくり口を開いた。
笠「……一級って言った?」
粧は小さく頷いた。
「はい……」
笠井はため息をついた。
笠「私が祓ったのも一級よ?」
淡々とした声。
笠「確認したけど、呪霊なんて残ってなかったわ」
粧の肩が小さく震える
笠「だって、私が既に祓ってるんだもの
______残ってたのは、ただの残穢のみ」
一歩近づく。
冷たい視線が突き刺さった。
笠「呪霊の気配と残穢の気配も分からないなんて」
言葉が鋭く落ち
笠「この先、仕事が務まるの?」
粧の指が強く絡まる
「……すみません」
それだけしか言えなかった。
どうやら、粧の勘違いだったらしい。
笠井はくるりと周囲を見回した。
そして、今度は柔らかい笑顔を作る。
笠「皆さん、大丈夫よ」
明るい声で言う。
笠「新人の勘違いだったみたい」
窓たちに向かって続ける。
笠「もう呪霊はいないから、安心して最終調査を再開してちょうだい」
その場の空気が少し緩む。
だが――
笠井は再び粧を見ると、表情を一瞬で消した。
鋭い目。
何も言わず、そのまま去っていく。
その背中が見えなくなると、周囲からひそひそ声が聞こえ始めた。
「なんだよ……」
「焦らせやがって」
「新人らしいぞ」
「迷惑だな」
粧は、そんな言葉を耳に、口を少し尖らせながら立ち尽くしていた。
視線は床。
胸の奥がじんわり重い。
(……私、何やってんだろ)
作業を再開しなければ。
(別に、辞めるんだから…無視して見過ごせば良かっただけなのよ)
そう思い、ゆっくり顔を上げたその時だった。
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作者名:はなり | 作成日時:2026年3月14日 11時


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