もう1人の元教師 ページ24
______補助監督2日目の朝
早朝の高専は、まだ静まり返っていた
補助監督の執務室にも、誰の姿もない
窓から差し込む淡い朝の光だけが、整然と並んだ机を静かに照らしている
その中で一人だけ、椅子に座っている人影があった
粧だ
まだ制服には着替えていない
オーバーサイズのパーカー姿で、椅子にだらりと腰掛けている
眠そうな目でパソコンの電源を入れながら、ぽつりと呟いた
(……とりあえず昨日の続きやんなきゃ)
カチ、とマウスをクリックする。
画面が立ち上がり、補助監督のスケジュール表が表示される
そのままぼんやりと画面を眺めていると
ガチャ、と執務室のドアが開いた。
粧が顔を上げる
入ってきたのは、夏油だった
黒いコートを肩にかけたまま、軽く目を細めて笑う
夏「おや」
少し驚いたように言う
夏「早いね?」
粧はすぐに視線をパソコンの画面に戻した
カチカチとマウスを動かしながら、淡々と答える。
「猪野先輩」
表情一つ変えない
「ムカつくので、一緒に出社したくないし勝手に早めに出てきました」
そう言いながら、画面を切り替える。
スケジュール画面から、昨日の作成途中の報告書ページへ
夏油はその答えに小さく笑った
そして粧の隣の椅子を引き、自然な動作で腰掛ける
夏「そうか」
穏やかな声だった
粧は一瞬だけ視線を向ける
「……徹夜ですか?」
夏油は軽く肩を回した
夏「ああ」
少し疲れたような笑みを浮かべた
夏「任務が夜まで長引いてね」
そして、パソコンの画面を覗き込む
夏「報告書かい?私が確認しよう」
そう言うと、夏油は粧の前に身体を乗り出した
奥にあるマウスへ手を伸ばす
その瞬間――
夏油の身体が、粧と机の間にすっと入り込んだ
距離が、一気に近くなる
粧の目がわずかに見開かれた
胸が、少しだけ高鳴った気がした
粧は眉間に皺を寄せる
(不整脈……?)
心の中で、自分に問いかける
夏油はそんなことに気づく様子もなく、黙って画面を見つめていた。
真剣な顔だった。
静かな時間が流れる。
マウスのクリック音だけが、執務室に響いた
しばらくして――夏油が口を開いた。
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作者名:はなり | 作成日時:2026年3月14日 11時


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