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7話 ページ7

大田葉月二日酔いエグいんだけど。お前は?Aもかなり飲んでたろ

なんで、わざわざメッセージで伝えるんだ。小さくため息をついて、ポチポチと文字を打ち込んだ。


A私の前のデスクですよね?なんで直接言わないんです?


パソコンを挟んで前から、密かに笑う声が聞こえる。それ以上何かメッセージが送られてくる事も無く、普通に朝礼の時間がやって来た。何となくメッセージを送りたかっただけだろう。おそらく。


そのまま大きなトラブルも無く、やってきた昼休み。お弁当を取り出して、いつもの彼女がやって来るのを待つ。5分もしない内に、見覚えのある姿がこちらに駆け寄ってきた。


「Aちゃん!一緒にお弁当食べよ」
「ん、いーよ。雪のお弁当ちょっと食べさせてね」
「もちろん!」


ふわりと巻かれた深い色の茶髪が目立つ彼女は、佐々木(せつ)、同い年。大田さんと同じ、私の同僚だ。その口調と格好から、ゆるふわ系の女子と思われがちだけど、雪はとても思慮深くて気遣いのできる優しい友人だ。


「今日はねー、朝5時起きでハンバーグ作ったの!やっぱりお肉は大事でしょ?ふふ、一口あげる」
「…………美味しい、さすが雪」
「でしょ?」


自信ありげにそう笑って、雪も一口ハンバーグを口に入れた。「最高の出来」と目を輝かせる。頬にかかった髪を耳にかきあげる仕草を見て、私は違和感に気付いた。


「雪、髪切った?」
「ふふ、バレた?最近暑いし、涼しくなるかなって思って!この髪型の私も可愛いよね、知ってる」
「それ、人によってはナルシストって思われるから気を付けなよ」


笑いながらそう言うと、友人は笑いながら、瞳の奥に真剣そうな光を灯した。耳に付けられた小ぶりのピアスが、照明に照らされてきらめく。


「私は私に自信があるもん。私は一生懸命お洒落してるし、スキンケアもしてる。だから、私は可愛いの」


ピアスだけじゃない、彼女自身がきらりと自信に照らされている。「私、何か間違ってる?」と首を傾けた彼女に、私は首を横に振ることで返答した。

雪は、自分自身に自信がある。「私は私だ」と言い切れる強さを持っていて、私はそんな友人を密かに尊敬しているのだ。

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作者名:梅干し茶漬け | 作成日時:2021年8月11日 20時

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