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「うぇっ?!」
思わず2度見してしまうような声がして、それが彼女の声だと気づくのに時間を要してしまったのは、マジで聞いたことなかったから。明るくてよく喋るけどそんなにリアクションが大きいタイプじゃないはずなのに。
「須貝さん…今、なんて」
「デートしない?って…言ったんだけど」
ドンガラガッシャンと盛大に音を立てて、Aさんがデスクの上の資料やらなんやらをぶちまけた。オフィスにいた全員が振り返って、彼女はさらに焦っていた。
「でーと…ですか」
耳を真っ赤にして服の裾を掴んで、こーんなに焦ると思ってなかったから驚きだ。
…これってもしかして、勘違いしてもいいんかな。ふ、と思い浮かんだそれが、むくむくと大きくなっていく。畳み掛けるなら今だ、と感覚が告げていた。
「どう?お嬢さん」
ニッコリと笑顔を作って顔を覗くと、真っ赤になった彼女がちらりと俺を見た。
「え、えっと…ですね」
きゅ、と下唇を噛み締めるその表情に、ゴクリと喉が鳴った。オフィスにいた全員が、手を止めて俺たちを見ている。
「デート、は___________」
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まあ分かると思うけど、彼女の答えはYESだった。それからトントン拍子に話が進むとまでは予想してなかったけど。
意識してなかった俺にちゃんと『デート』って言葉を出されたことで一気に意識するようになったらしい。
「駿貴さぁん?」
おおっと、Aが呼んでるから行かなくちゃ。
_______上手いこと話が進むのは、まるで春に花が一斉に咲くかのようで。
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『平舞 春庭花』は、玄宗皇帝が春に花が咲くのが遅いことを憂いて曲を演奏させたら花が咲いたことからその名がつきました。
恋が実らない憂いに、アプローチ。ちょっと無理矢理ですが、春庭楽でした。
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作者名:エリッサ | 作成日時:2021年1月7日 19時