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La fleur que vous m'aviez donné / kwmr ページ24

※※このお話の河村さんは大学生設定です※※

こんなとこに来るなんて________。ぐい、とジンライムを口に含むと、ライムの香りが鼻に抜けた。店内に流れる電子音が、慣れない耳にはうるさい。ボーッと立っているわけにもいかず、ただ酒を口に運びフロアを見回すばかりだった。

「どう、河村」

場に似つかわしくない挙動の僕を、くい、と友人が顎をしゃくって笑う。いわゆるクラブに連れてこられたのだが、いまいち溶け込めない。仕方が無いのでちらり、とまたフロアを一瞥して肩を竦めて見せた。

「どうにも」

中立的というよりはやや否定的な、なんとも言えない返答をした。機嫌を損ねるかと思ったが、それも河村らしいと友人は笑った。そういえばそういう奴だったな。

「まぁせっかくなんだから楽しめよ」
「おい、ああ…」

言い終わるや否や、友人はヒラヒラと手を振って派手目な女性と親しげに消えていってしまった。連れてきておいて放っておくとはどういう了見だ。

まあ兎にも角にも、早々に独りになってしまった。酒を飲んで帰るか、それともアクションを起こすか。『せっかくだから』とはいえ、僕に女性を誘うような度胸は毛頭ない。前者だな。

さて、とグラスを傾ける。空になったグラスの向こう側をふと見ると、隣のテーブルの女性が写っていた。

ぱちり。グラス越しに目が合う。失礼だったかと慌ててグラスを下げると、彼女はヒールの音を鳴らして僕の目の前に自分のグラスを置いた。

「河村くん、こういうとこ来るんだね」
「…は?」

一瞥しただけだし、知らない女性だとばかり思い込んでいたのだが、出で立ちが異なるだけで彼女はAさんだった。化粧と服装が変わるだけでこんなにも見違えるのか、と感心する。

「連れてこられた」
「あら、そうなの」

口許に当てた指には、細いシルバーの指輪が光っていた。男からの贈り物なのかと考えてしまうのは邪推だろうか。彼女はグラスの縁を指でなぞった。

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作者名:エリッサ | 作成日時:2021年1月7日 19時

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