クロスステッチで描く夢

浸食/kwmr ページ16

友達と2人で呑んだ帰り、繁華街。

近年めっきり減ったネオンサインに代わるLEDの街並み。

酔いをさましてから帰ろうと歩いていると、キャッチや飲み会帰りのサラリーマンの中に、あの人を見つけた。


私の彼氏だった。

拓哉さんの隣を歩く華奢な女の子。

背の高い私とは違っていかにも異性に好かれそうな可愛い子だった。


「どうして、」


人生で初めて出来た彼氏が浮気しているところを目の当たりにしなければならないのか。

確かに今日は遅くなるかも、と言っていた。

どうせ仕事だろうと思っていたのが運の尽きかもしれない。

そもそも、私の知っている拓哉さんは、浮気なんかする人じゃない。

そもそも仕事以外で飲みに行くなんてほとんどしない人なのに。

でも、私が見たのは紛れもなく拓哉さんで。

表情は分からなかったけど、きっと微笑んでいたのだろう。

2人で暮らす部屋に帰るのが初めて嫌になった。

あれを見て、どんな顔で拓哉さんに会えばいいの？

*


とぼとぼと予定の倍近く時間をかけて家にたどり着く。

コップに水を注いで一気に飲み干し、乱雑にシンクに置いた。

生ぬるい水が、今日はちょうどよい。

スマホを取り出して時間を確認すると、もうすぐ０時。

このまま起きていて拓哉さんを待つか、それとも寝てしまうか。

お酒と動揺で大して回らない頭を回して、結局私は寝ることにした。

あの女の子と歩く拓哉さんを考えて、彼を待つのは無理だった。

さっさとベッドに潜り込み、泥のように眠った。

疲れすぎて、考えごとをする余裕なんてなかった。

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