もはや鬼だよね、鬼。 ページ19
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とにかく、まずは本音からでしょ。
何としてでも、Aの心の奥の感情を引っ張り出したかった。
思ってもないこと言ってみたり、挑発してみたり。
…ま、この辺は長い付き合いだから、Aの気持ちの動きは手に取るようにわかんだよね。
苦しそうにつらそうに…
それでも、涙を零すまいと踏ん張って、懸命にオレに理解してもらおうと言葉をつなぐAに心が痛んだ。
「もういいよ、んなこた言わなくったってわかってんだよ」って心の中では思ってんのに、正反対の言葉で煽って、ここまで言わせてるオレってさ。
もはや鬼だよね、鬼。
でも、ちゃーんと本音を零させて、そこから話をしなきゃ本当の解決はできないから。
オレに誘導されるまま心の内を零し始めたAは、一旦堰を切ると、それをきっかけにしてこれまで心に秘めてきたんだろう感情が次々に言葉になって溢れてきた。
オレはただ聴いてるだけだったけど、
そっか…そうだったんだな…って、すんごい切なくて…。
それでも頑張って泣かずに大きな瞳に涙を溜めたまま気持ちを伝えようとしているAに、オレまで気持ちが揺さぶられて、愛しくて愛しくてたまんなくなってきて…。
「離れたくなんかない…！だって、好きなのに…」
「こんなに和也が大好きなのに…」
「なんで…離れなきゃいけないの…」
「傍に居たい…絶対にイヤ…たとえ傍に居られなくても、この手はずっと…絶対に離したくなんかな――――……」
ようやく本音を口にした愛しいヒトを、思わずグイッと引っ張って思いっきり抱き締めた。
「…よく言えました」
1人にする訳ないじゃん。
迷えって言ったでしょ。
オレが手を引いててやるからって。
何のために繋いでると思ってんの？
離さないためだよ。
一緒に居る。
絶対に離さない。
「オレも…おんなじよ…」
なんでだろうね。
オレまで泣きそうな気分になって、Aに情けない顔を見られないようにほっそい肩に顔を埋めると、背中と頭に廻した両腕に力を籠めて。
「…離さない」
オレも目を閉じて、本音を耳元で囁くと。
「う…」
オレの肩に、ぽとり…と温かい雫が落ちたのがわかった。
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作者名：kico
| 作成日時：2019年5月30日 12時
