想定内ではあったのよ。 ページ18
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想定内ではあったのよ。
マネージャーからもらった情報にニッシーや谷山たちの話を照らし合わせれば、実家のこと、仕事のこと…オレの知らないところでいろんなことが起きていて、Aは多分追い詰められてるんじゃないかって。
何なら、あの記者の話やマネージャーとの話の後からずーっと直接会って話すらできてないワケでしょ。
雨の中で泣きじゃくっていた様子を考えれば、何を1人で考えていたのかなんて想像に難くはなくて。
Aのことだから、きっと逃げずに正面から受け止めようとするだろうってことも、その結果最悪どんな答えを出してくるのかってのも、オレはちゃーんと想定してた。
たとえAがオレの手を離そうとしたって、離すつもりなんてないんだもん。
オレの答えなんて、あの頃から何も変わっちゃいないんだから。
「向こうに行く」ってことも想定内だよね。
Aならこの状況で全てを投げ出すことはしない。
だから、その上で。
Aが出してきた答えを最大限尊重しようって、最初からそう決めて話を聞いた。
どうせ逆にまた難しく考えて、自分1人で悩んでんだろうなってこともわかってたし、手を離すか離さないかってのが争点になるだろうなってのもね。
強がりでも何でもなく、想定はしてたの。
ま、さすがに涙をこらえて口から絞り出すように小さな声で、もう…手を離してもらうべきなんじゃ…なんて言わせてしまった時には、わかっていても思ってた以上の衝撃だったし、何と言ってもね。
たとえ今じゃなかったとしても、“いつか先でオレから手を離されなきゃなんない”ってAが思い込んでる…ってのがさ。
ニッシーからそれっぽいこと聞いてはいたのに、かなりの衝撃だった。
Aにそこまで考えさせてしまってたんだ、という事実。
想定内のオレですらこんな苦しんだよ？
…ってことは、こんなことずっと1人で考えて来たAは、いったいどんだけ苦しかったんだって。
こんな状況になるまで先のことを考えようともせず、Aが何も言わずに一緒に居てくれてる状況に甘えるばっかで、放っておいた自分にムカついて苛立って。
冷静になろうと目の前の煙草に手を伸ばし、火をつけて思いっきり吸い込んでみたものの…
Aに煙が流れないように、と、明後日の方向へ煙を吐き出してる自分のバカさ加減に気付いてさ。
そんな自分にますますムカついて。
そーいうトコだろ、何やってんだオレ…と自嘲しながらすぐに火を揉み消した。
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作者名：kico
| 作成日時：2019年5月30日 12時
