代わり ページ1
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「…どういうことですか？」
「俺は貴女と仕事がしてみたい。だから引っ張った」
「！？」
「まだ数回しか会っていないけど、貴女なら俺のことを理解してくれるんじゃないかって。そんな気がするのよ。こういう第一印象は大事にしたいタイプなの」
「あ、あの…」
「…なーんてね。そう言ったらどうします？」
…えっ？冗談？？
どう受け取っていいかわからない。
「困るよね。わかります。それが正解だよ」
「…からかってるんですか？」
「いいえ。大真面目。何が正しくて何が正しくないのか。知りたいなら教えてあげます。こっちに来た時にね」
「からかわないでください！！」
「…よく頑張ったね、貴女」
「え…？」
いきなり和也そっくりの声で甘く言われて戸惑った。
「いろいろ大変だったでしょ。めんどくさいこと言う人も居ると思うけど、こっちに来れば俺が守ってあげる」
「な、なにを…」
「大丈夫。全部忘れて…こっちにおいで…」
……。
囁き声なんてそっくりだ。
気を抜くとうっかり耳が騙されそうだけど、違うよ和也じゃない！と心の奥が拒否反応を起こして、慌てて首を横に振る。
「貴女と仕事がしてみたい。それは嘘じゃないから…。俺を信じて」
「……」
「叔父さんのことも気になってるんでしょ？
いいじゃない、難しいことは何も考えなくていい。西村課長だっけ？あの人よりかは俺の方が、貴女を支えてあげられると思うよ？」
「…え？」
「離れてしまうと、彼氏も遠くなっちゃう。でも、それを含めて人の縁なんだよ」
無音のテレビ画面で和也が歌っている。
キラキラした笑顔…
アイドルの和也は、よく知っているのに遠い世界の人のようで…
「代わりに寂しさを埋めてくれる縁だってあるかもしれないよ？…ね、“Aちゃん”…」
「！」
和也がそう呼んでくれた時もあったっけ…。
『Aちゃん…』
懐かしい記憶…
思い出すと条件反射で胸がきゅーんと甘く締め付けられた。
「…ひとつ教えてください」
「ん？」
私はアイドルの和也を本気で応援したいと思ってる。
たとえ離れてしまって、遠く感じても。
和也が元気で頑張っている姿を見ることができるなら…それに勝る喜びはないよ！
支えてくれるとかくれないとか、もう今の私にとって理屈はどうでもよくて。
代わりなんてあり得ない！
和也以外は、欲しくない―――――！！
「今回の逆指名、本当の目的は何なんですか？」
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作者名：kico
| 作成日時：2019年5月30日 12時
