我儘いーっぱい言おうじゃないよ。 ページ7
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「悔しい？何が？」
そんな言葉は予想してなくて、真意を問うと。
「和也は、いつも思ってもみない時に不意打ちで幸せをくれるんだもの」
「…は？」
「私だって和也に幸せを感じてほしいって思ってるのに…今日だってもらうばっかりで、私はたこ焼きとか水風船とかしか思い浮かばなくて…。悔しい…」
バカだねー！
…ま、その鈍さがAだなって。
思わずぶはっと吹き出したら、笑わないでよ！と可愛く睨まれた。
…気付かなくていい。
アナタのそれ、まんまオレの台詞だなんて気付かなくていいよ。
オレの胸にすっぽり収まってしまう小柄なアナタが、どんだけ大きな力をオレに与えてくれてんのかなんて、一生教えてやんない。
だから、これからもずーっとオレのことばっか考えてて――――…
なんてね。
甘い言葉が素直に言えないオレは、相変わらず天邪鬼で腹黒で。
「さっきの、来年も再来年も…って話。ずーっと2人で…ってのはわかんないなー(笑)」
「…どういうこと？」
案の定、どう受け取っていいのか少しだけ困った顔。
「や、だってさ、そのうち増えてるかもしんないじゃん。“2人”とは言い切れないよね…ってこと」
「…あ///」
「増えようと増えまいとAは一生逃げらんない。固定だもん。だから、正しくは“2人以上”ってことで」
屁理屈を捏ね回して、くくく…と笑うと、更に泣きそうな顔で「そっか…そうだね」とAも笑う。
ほらね？
そんな顔を見るだけで満たされてしまうって、オレも大概よ？
「それにさ、ずーっとここで見れるかもわかんない」
「え？」
「歳取ったら引っ越す可能性だってあんだから」
照れくさくて、どんどん饒舌になっていく。
「未だにガラケーでアナログなお嬢さんがばーちゃんになった時、こんなコンピューター制御のハイセキュリティマンションは暮らしにくくなるかもしんない。
オレも腰が悪いから、どっか便利な所に一軒家建ててさ」
「一軒家…」
「そ、一戸建て。設計をAの実家に頼むってのはどーよ？」
「和也…」
「ヒロに、2人で我儘いーっぱい言おうじゃないよ。セキュリティが万全でー、腰が痛くなくてー、ゲームできてー家事もしやすくてー…」
「じゃあ…お庭で…ガーデニングできて…」
「おーいいじゃん。色とりどりの薔薇で花壇を飾っちゃってさ」
「…あ、違うの。パセリとかサニーレタスとか…」
想定外の答えに、思わず「そっちかよ！」と笑ってしまう。
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作者名：kico
| 作成日時：2020年7月2日 23時
