いてっ。あいたっ。 ページ6
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今度はさっきと違い、角度を変えながら味わう長めの深いキス。
唇を塞いだまま、自分のビール缶とAの手から手探りで受け取ったビール缶をテーブルに置いた。
薄く開いて応えてくるAの腰を右手で抱き、左手で頭から強く引き寄せる。
漏れる吐息。
もっともっと…と、キスが深くなる。
パパン…パパ…パパパパ……
リップ音の合間に、遠くの破裂音が小さく響いた。
「あ…花火…」
「集中して」
「でも…あん、見れなくなっ…」
「後にしなさいよ」
再び舌を絡めとると、「ん///」とくぐもった声で応えて、Aが力を抜いた。
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+++
どのくらい経ったのか…
リビングの中にも外の遠くの空にも、再び静寂が戻ってきた。
ソファの上で、浴衣のはだけたAと2人。
余韻に浸って肩で息をしている華奢な身体を腕に抱き、ちゅっ…と額に唇を押し当てると、胸の中でふふ…と顔が緩んだ声がした。
「花火…終わっちゃった…」
「そーね」
「一斉に何千発も打ち上げられるラスト数分のクライマックス…見たかったな…」
「花火見なくていいんですか?って、オレ、ちゃーんと声を掛けて教えたげましたけどね」
「う///!…言わないで///」
終焉間近の花火の音が何重にも重なって大きく聞こえ始めたのは、浴衣姿でのあんなことやこんなことに2人盛り上がってる真っ最中で。
イイトコロで『止めて花火見る?』とワザと意地悪く声を掛けたオレに涙目で首を横に振り、『ね…お願いこのまま最後まで…』としがみついてきたってのは、Aにとって思い返すとめちゃめちゃ恥ずいことらしい。
「ま、我々もクライマックスで盛り上がってたからね。仕方な…あいたっ」
「言わないでって言ったでしょーっ///!!」
ちょっとからかうと真っ赤になって、いつものへなちょこパンチがぽこんぽこんと飛んでくる。
全然痛くないけど、いてっ。あいたっ。と受け止めながら、愛おしくてそのまま思いっ切り抱き締めた。
「もうっ///」
「…いーじゃん。また来年一緒に見るんだから」
「!」
しっかり身体を密着させて、Aの耳元で囁いた。
へなちょこパンチが止まる。
「これからずーっと…何回だって。2人でまた一緒にここから見れるでしょ」
「和也…」
ふふんと口角を上げてみせると、Aは羞恥で染まっていた頬をまた違った意味で真っ赤に染めて泣きそうな表情になり…
オレの胸に顔を埋めて、「悔しい…」と呟いた。
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我儘いーっぱい言おうじゃないよ。→←…は(笑)!ちっちぇーな!
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作者名:kico | 作成日時:2020年7月2日 23時