常連 ページ11
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追加で頼んだ2杯目のビールが空になった頃…
きい、と音がして奥の扉が開き、女将さんがサワーの準備をしてトレイに載せて持って来てくれた。
「そろそろだろうと思ってね。ちょっと待ってな」
女将さんが目の前でグレープフルーツを半分に割り、片方の皮を落とすといつもながら鮮やかな手つきで切り分けてゆく。
この自分で搾る果実入りサワーも今ではお店の人気ドリンクだ。
私も、お邪魔した時にはいつもビールとこのサワーばかり飲んでいる。
「こないだお嬢ちゃんが来てくれた時には、仕入れがなくて悪かったねえ」
「いえ、このサワーは女将さんが選んだ美味しいグレープフルーツがあってこそですから」
「おやまあ、嬉しいことを言ってくれるじゃないか。…さあ、後は勝手に搾って好きにやっとくれ」
カウンターに置かれたのは、いつもと同じ、残り半分のグレープフルーツと搾り器、そしてざく切りの実が入ったサワーグラス。
一緒に持って来てもらったレモンサワーを飲みながら見ていた和也が、ニヤリと笑った。
「…ふーん」
「？」
「なんかさ、今じゃオレよりかアナタの方が常連じゃん」
「そんなことないよ(笑)」
「和ちゃんの言うとおりかもしれないねえ。
今じゃお嬢ちゃんの方がこの店に馴染んでいて、1人でも時々寄ってくれるんだから、ありがたいじゃないか」
「ねー(笑)。もはやオレ、おっちゃんとおかーさんの近況を、いっつもこのヒト経由で教えてもらってんだもん。
まさかこんな日が来るとはビックリだわ(笑)」
和也が左手を伸ばしてグレープフルーツを掴み、話をしながら、よっ…と搾り器に押し付けた。
まあるい手首がくっと回転すると、パッと爽やかな匂いが立つ。
この光景も久しぶりだ。
1人の時はもちろん自分で搾るけど、2人の時に何も言わなくても自然とこうして和也が搾ってくれるようになった。
顔を上げると、女将さんはもう奥へと姿を消していて。
2人きりに戻ったお店に甘酸っぱい柑橘の匂いが広がってゆく。
「ありがとう…」
「どーいたしまして」
搾ってもらった果汁を注いで、マドラーでガラリとゆっくり混ぜた。
透明な小さな泡を纏ったグレープフルーツの果肉たちが、うす黄色に染まったサワーの中でシュワシュワと音を立てて踊り始める。
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kico(プロフ) - あさひさん» あさひさんコメントありがとうございます！某その節は「もう続きは書けない＞＜」って散々愚痴を零してましたもんね(苦笑)^^;このタイミングで書けて良かった。今の幸せな2人を見届けてくれてありがとう(*´ω`*)大感謝です(感涙)！ (2019年10月27日 9時) (
レス) id: 890f6f329d (このIDを非表示/違反報告)
あさひ(プロフ) - kicoさん、素敵なお誕生日のお話ありがとうございます！今の二人が変わらず幸せで、私も幸せですー！定食屋さんのお話、もう読めないかなと思っていましたが、読めて嬉しいです！YELLOW MAGIC 読み返してきます！ (2019年10月26日 12時) (レス) id: 1753a678de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kico
| 作成日時：2019年10月11日 18時
