8. いちと、じろ。 ページ8
「いってきます」
温かな日差しが降り注ぐ、日曜日。
昨日まで雨の予報だったのに、空はすっかり晴れ渡った、気持ちのいい日。
お気に入りのダッフルコートを着て。
スケッチブックと四郎から貰った色鉛筆を携え
三郎お手製の青と白のボーダー柄マフラーをぐるぐる巻いて。
「はい、いってらっしゃい」
「気を付けてね」
「玄関閉まったら、タイマースタートだから」
ふにゃふにゃと嬉しそうに笑う一郎。
.....と、その隣りでいろいろ下がってる二郎を送り出す、午後三時。
「ちょ...ちょっとそりゃないだろう」
「何言ってんです。スタートナウ！！でもいいくらいなのに」
「えぇえっっ！？」
いちくんのためなら一時間でも二時間でも！！と鼻を膨らませ
日帰り旅行だのテーマパークのチケットだのを手配しようとした二郎に
じろにはじろの時間があるからと、きっぱり断った一郎。
それでも！！と食い下がる二郎に、
「じゃあ一緒に、絵を描きに行こう？」と提案し、それがやっと実現した今日。
「ひどいよね、四郎も五郎も」
「ふふふ、愛されてるねーじろ」
「...あの物言いからどうやったらそうなるのよ」
「んふふふふ」
ふわふわとご機嫌な一郎。
少し茶色い髪が柔らかな日差しに煌めき、軽やかな足取りに揺れる。
その少し後を歩く二郎は、
口ではぶぅぶぅ言いながらもその心は、大きな大きな幸せで満たされていた。
「あと何分くらいかな、48分35秒くらいかな」
「いちくんまでそんなコト言うのっ！？」
「あははは」
こんな風に歩くのなんて、いつぶりだろう。
「今日晴れたのは俺のおかげなんだからね？」
「うん、感謝してる」
こうやって、二人きりで歩くのなんて、いつぶりだろう。
雨上がりの澄んだ空。
草木に煌めく雨粒。
柔らかな風に揺れる花。
目に映る、そのすべての景色が嬉しくて。
嬉しくて幸せで、愛しくて。
「いい天気はいつもじろが連れてきてくれるもんね」
「いちくんのためなら天気の一つや二つ、変えてみせますよ」
「んふふ、うん」
そして得意げに微笑みかけた二郎に、
それを否定するでもなく優しく微笑み返してくれたことにもう
「ああーーしっあわっせだああぁぁ！！」
溢れる想いを止められず、ガッツポーズで雄叫びをあげ、
慌てた一郎に口元を押さえられたことさえ
二郎の心に溢れんばかりの幸せを、運んで来るのだった。
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マナ - 作者さんに質問です。あなたは茨城県北茨城市磯原町の出身、または住んでいますか？ (2021年11月27日 20時) (
レス) @page1 id: 8df98fa480 (このIDを非表示/違反報告)
檸檬(プロフ) - こんにちは。その後が気になっています。また、お時間あるときに続きをお願いします。 (2021年7月17日 17時) (レス) id: d5f4de7f1a (このIDを非表示/違反報告)
あっちゃん(プロフ) - ううっっ！ いちくーん。以上心の叫びでした。きっとこの先に幸せな未来が来るんだよね？ね？ね？心静かに待ちます。 (2021年1月14日 15時) (レス) id: 178db8b66c (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - そか、マイガールだから、舞賀家か〜....なるほどぉ. (2020年8月13日 18時) (レス) id: 84fdbed2f6 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - あっちゃんさん» 続)「うちのいっちゃん」なあの写真を想像しながら書いてるよ。なかなか筆が進まないことも多いけど、読んでくれたら嬉しいです。本当にありがとう！！ (2020年8月7日 14時) (レス) id: 075ae85cbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mio
| 作成日時：2020年3月12日 0時
