３. ＊＊ ページ3
それは一昨年のバレンタインデー。
同じように何が食べたいと聞いた一郎に
わけが分からないまま素直に各々の食べたいものを答えた兄弟たちが
そのワケを知り、同時に後悔したのはその日の夜。
残業をした後、同僚と少し、お酒を楽しみ。
家に帰った10時半。
最寄りの駅でバッタリ出会った二郎と三郎が
ご機嫌でリビングに続くドアを開けた、そこに見えたのは。
大きなダイニングテーブルの真ん中に鎮座する
きっと手作りの、チョコレートケーキとチーズケーキ。
その周りには、唐揚げにカニクリームコロッケ、ハンバーグにオムライス。
兄弟たちがリクエストした品々が、所狭しと並んでいて。
伏せられた５つのグラス、重ねられた５枚のお皿。
ラップがかかったままの、手を付けられていない料理の数々。
そして薄く灯りをつけたリビングで
テーブルに突っ伏して眠る、エプロンをしたままの一郎の姿。
『うわーんいっちゃーーん！！』
『ごめんよいちくぅぅん！！』
『わっっ！！なになに？？』
今日が何の日か。
それぞれの鞄いっぱいに、チョコレートが入ってるのは、なぜか。
一郎が、何が食べたいかと聞いたのは、なぜか。
その理由が一気に脳内を駆け巡り
それと同時に二人して一郎に駆け寄り抱き着きおいおいと泣いている姿を
少し遅れて帰ってきた年下二人に目撃された、２年前の、２月14日。
聡い二人は瞬時に状況を理解し
そして同じように謝り倒すその姿に
『だって勝手に用意したのは俺だから』と、ふわりと笑った一郎。
明日食べようねと
すっかり冷えた料理を冷蔵庫に収めていく姿に、また涙が溢れそうになった、あの日。
そんなことがあった翌年の、バレンタインデー。
同じように何が食べたいと聞く一郎に、兄弟たちは揃って、『カレーライス』と答えた。
一郎の想いは、踏みにじりたくない。
でも、余計な負担はかけたくない。
兄弟それぞれに、惜しみなく愛を注いでくれる一郎。
そんな一郎の申し出への返事は
『そんなことしなくていい』も、『気を使わないでいい』も、違うと思ったから。
『......そんなのでいいの？』
『そんなのじゃないよ、いちくんのカレーは最高だもん』
『早く帰ってくるね！！』
『ちゃんと仕事しなさいよ』
『失礼だなぁしろちゃん、俺これでも人気ナンバーワンよ？』
わいのわいのと言い合う自分たちを見ながら微笑むその笑顔をいつまでも、
見ていたいから。
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マナ - 作者さんに質問です。あなたは茨城県北茨城市磯原町の出身、または住んでいますか？ (2021年11月27日 20時) (
レス) @page1 id: 8df98fa480 (このIDを非表示/違反報告)
檸檬(プロフ) - こんにちは。その後が気になっています。また、お時間あるときに続きをお願いします。 (2021年7月17日 17時) (レス) id: d5f4de7f1a (このIDを非表示/違反報告)
あっちゃん(プロフ) - ううっっ！ いちくーん。以上心の叫びでした。きっとこの先に幸せな未来が来るんだよね？ね？ね？心静かに待ちます。 (2021年1月14日 15時) (レス) id: 178db8b66c (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - そか、マイガールだから、舞賀家か〜....なるほどぉ. (2020年8月13日 18時) (レス) id: 84fdbed2f6 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - あっちゃんさん» 続)「うちのいっちゃん」なあの写真を想像しながら書いてるよ。なかなか筆が進まないことも多いけど、読んでくれたら嬉しいです。本当にありがとう！！ (2020年8月7日 14時) (レス) id: 075ae85cbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mio
| 作成日時：2020年3月12日 0時
