18. ＊＊＊＊ ページ18
持ってくるようにと言われたあれこれを、取りに帰った我が家。
保険証に印鑑に、あ、あとお金も....と、
落ちる汗さえ拭わないままガサガサした床の間兼一郎の寝室となっている部屋の
引き出しの奥に、在ったモノ。
「なに...これ...」
使い古した診察券、袋に入った大量の薬、
そのどれもに、「舞賀一郎様」と、書かれていて。
裏返した診察券、その後ろには、
診察予約と書かれたシールが、もう何枚も、張り重ねられていて。
いちばん最近、予約として書かれていた日にちは、
『仕事が遅くなった』と夜10時を回って一郎が、帰ってきた日と、重なっていて。
「なにこれ.....なんだよこれっっ...」
その前の日付も、前の前の日付も
そしてこの大量の薬を飲んでいる姿も
記憶のどこを探しても、こんなものたちと一郎が、結び付かない。
俺は何を、見ていたんだろう。
俺は何を、見ていなかったのだろう。
震える手、追いつかない思考、
それでもとにかく、兄の身に起きている尋常ではない出来事を、なんとかしないと、いけないから。
引き出しの中身ごと鞄にガサッと放り込み、
流れる汗を拭うことなく、もつれるように玄関を飛び出した二郎が来た道を再び駆けて行った、
三年前の、「あの日」。
「.....ごめんね」
面と向かって一郎には、決して言えないその言葉を、眠る一郎に呟く。
だってそれは一郎を、傷付けることになるから。
家族のために、俺たちのために、
きっときっと、いろんな我慢をしてきたであろう兄。
もしかしたら今もそのさなかに、いるかもしれない、兄。
でもそれは兄にとって、きっと不幸せだけではないことを、
兄弟たちは、知ってる。
大学に合格した日
試験を突破した日
就職が決まった日
それぞれの努力が実ったとき、
誰よりも誰よりも幸せそうに、泣いてくれてたこと、覚えてる。
そして。
俺たちの側でいつも、
嬉しそうに幸せそうにしてくれていること、知ってる。
今が今で、あるために。
たくさんたくさん話し合って、たくさんたくさん考えて、
兄弟たちなりの最良を、見つけて信じて繋いできたあれからの日々。
その日々が幸せであるように、
誰よりも誰よりも、心を砕いてくれた、兄。
そしてその日々を、誰よりも誰よりも、愛している、兄。
その兄に贈る言葉はきっと、ごめんなさいではないと、思うから...
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マナ - 作者さんに質問です。あなたは茨城県北茨城市磯原町の出身、または住んでいますか？ (2021年11月27日 20時) (
レス) @page1 id: 8df98fa480 (このIDを非表示/違反報告)
檸檬(プロフ) - こんにちは。その後が気になっています。また、お時間あるときに続きをお願いします。 (2021年7月17日 17時) (レス) id: d5f4de7f1a (このIDを非表示/違反報告)
あっちゃん(プロフ) - ううっっ！ いちくーん。以上心の叫びでした。きっとこの先に幸せな未来が来るんだよね？ね？ね？心静かに待ちます。 (2021年1月14日 15時) (レス) id: 178db8b66c (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - そか、マイガールだから、舞賀家か〜....なるほどぉ. (2020年8月13日 18時) (レス) id: 84fdbed2f6 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - あっちゃんさん» 続)「うちのいっちゃん」なあの写真を想像しながら書いてるよ。なかなか筆が進まないことも多いけど、読んでくれたら嬉しいです。本当にありがとう！！ (2020年8月7日 14時) (レス) id: 075ae85cbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mio
| 作成日時：2020年3月12日 0時
