Kleinod Ⅴ (ページ7)

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《おいおい、俺が「俺」の言葉を律儀に全部跳ね除けてまで一緒に生きてきたメンバーなんだろ？いつも通り仲間ごっこでもしてればいいじゃないか》
珍しく唆す、よりも諭すように言う「俺」の言葉に耳を傾けてしまうのは、きっと今何を信じればいいかわからないから？
《俺と北斗は高地の次に打ち解けたんだろ？何を戸惑う事がある？俺の言う「大事なメンバー」って、所詮そんな程度のもんだったのか？》

「大事なメンバー」、そんな言葉に揺さぶられる。
みんないなくなったら、また自分は1人での任務に逆戻り？
だけど、いつもより「俺」が怖いくらいに素直じゃないか？
こんな、みんなを助けに行くような事、

《あのさぁ、「俺」だってこんなに一緒にいれば愛着も湧くんだよ》
見透かしたように、いや、全部伝わっているのだけれども、「俺」は言った。
《…ほら、タイムリミットはもうすぐだよ、急がねえと》
田中は鉤爪を手に取ると、立ち上がって、部屋を出る。
急がないと、みんなを守らないと、1人になったら、きっとまた自分は、
そんな気持ちをぐるぐる抱えながら。

本部では、話通り確かに松村が暴れていた。
それを必死に止めようとしている森本と、救護に走るジェシーの姿が見える。
鉤爪を振り上げて、その戦場に飛び込んだ。
片方の円月輪と競り合いになった鉤爪を、松村がちらりと見やる。
森本「樹…」
驚いたような森本の声とほぼ同時に、その彼から呻く声があがった。
もう片方の円月輪が、森本の腹部を切り裂いていたのだ。