Kleinod Ⅴ (ページ40)

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「…でも、僕は、」
ジェシー「こーちは？こーちはどう思ってるの」
「…確かに、「高地優吾」はグループSを信じていた、愛していた。…それは本当だ、何一つ偽りなんてない。「高地優吾」は、ずっとグループSにいたいと思っているよ」
ジェシー「それなら、」

「でも「僕」は、わからない。君たちの事を信じているか、愛しているか、本当にグループSに留まっていいのかなんて、何一つわからない」
あぁ、何回も嘘を吐き続けた所為だろうか、言葉が震えている。
「彼」が、自分の本心を――そもそも自己なんてないと思っていたのに――吐露するのに、身体が慣れていないのだ。

ジェシー「…こーちは、その、「名無しさん」として生きていきたいの」
冷たいジェシーの手が「彼」の手を擦る。
ジェシー「違うよね、こーち、言ってたじゃんか、『「高地優吾」でありたいのに、』って」
「……そうだね、でも、「高地優吾」はいない。ここにいるのは、何者でもない名無しの詐欺師で、」
ジェシー「こーちはここにいる！」
彼の両手が両腕を掴む。布越しにひやりとした感触が伝わった。

ジェシー「ねぇ、「高地優吾」は偽物の存在じゃないよ。慎太郎も言ってるじゃんか、俺はこーちと馬鹿みたいな事してはしゃいで、一緒に戦って、模擬戦もした事、全部、ぜーんぶ！この目で見て来た、この身で体感してきた！それは本物だよ」
こちらを見やった森本の目線が突き刺さる。
浮かべていた笑顔も形を保てなくなって、どんな表情をしているのかわからなくなってきた。