Kleinod Ⅴ (ページ4)

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自分が信じてやまないものが裏切られた時、文字通り目の前が真っ暗になった。
嘘だと信じていた。この手紙も、誰かの捏造だと。
でも高地は確かに「謝罪した」。それはつまり、本当だという事で。

自分を助けてくれた命の恩人も、自分に「嘘」をついていた。
彼は心の底から自分を助けてくれた命の恩人である高地を信じていた。依存していた。盲信していた。
…だから、その現実を受け入れたくなかった。
幸にも不幸にも彼は聡明であった。彼は状況を理解してしまった。
その事実だけが彼の胸奥を抉るように貫いた。
また「嘘」をつかれた。また裏切られた！

「１人に、しないで」って、自分は確かに言ったのに。
「裏切らないよ」って、高地は言ってくれたのに。
自分は、また裏切られた。
信じてしまったから？心を開いてしまったから？

不安に押し潰されそうになった時に優しく頭を撫でてくれたのも、
恐がる自分に「扇動」をかけてくれたのも、
あの時助けてくれた手の温もりも、
全部全部全部全部「真っ赤な嘘」だと、初めから裏切るつもりだったの？

暗闇の中で目を覚ました。
ふわりふわりと夢遊するように歩く。
人間なんて初めから信じちゃいけなかったんだ。
ぐるぐると落ちていくその思考に、誰も異論を唱えるものはいない。

ふらりふらりと歩いて、気付けば派手な装飾が眩しい場所にいた。
自分の姿を見てチラチラとこちらを見る者や、ヒソヒソ話す者の姿が映る。
あぁ、みんな裏切る、みんな敵ばっかり！
そう、敵ばっかりなんだから、ねぇ、戦場と一緒だよね、敵は、始末、しまつ、しないと、
悲哀、喪失、絶望、色んな感情が膨れ上がって、
ブレーキを失った彼は、「彼である意味」をなくしてしまった。
悲鳴の響くその中で、彼は壊れたようにカラカラと笑っていた。