Kleinod Ⅴ (ページ27)

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森本「きょも！」
倒れた京本を受け止めて、必死に声をかけるも彼の瞼が開く事はない。
《安心してよ、致死量入れてる訳じゃないし》
森本「お前…！」

《慎太郎、「俺」と一緒に生きていこうよ》
こちらに聞こえる声もその姿も確かに彼のままだというのに、確実に別人だった。
《なぁ慎太郎、何でそんな渋い顔するんだよ。また「6人」でさ、いつも通り過ごそうよ》
その口調も語る言葉も確かに彼そっくりだった。
だけど、ずっと続いていた違和の正体を掴んだ森本にとって、目の前の彼は「偽物」でしかない。

森本「ニセモノは引っ込んでろよ…！」
京本を優しく寝かせ、短剣を取り出してその切っ先を向ける。
「あれ」は一瞬田中そっくりな悲しそうな顔を浮かべたかと思えば、一度下を向いてせせら笑う。
《お前は「偽物」に縋ろうとしていたのに？》
森本「！」
その視線が「あれ」の背後にいる「彼」の方に向けられる。

確かに、Dr.Eilは、自分の知っているエイルさんは、「偽物」だった。
《何度も何度も「偽物」に縋ろうとしてたのに、「俺」の事は嫌うの？》
森本「お前は樹じゃない！」
《じゃあDr.Eilは？高地優吾は？全員「偽物」だ、「俺」と、何が違う？》
言葉に詰まる。「あれ」が言う事は、確かに正論だった。

「そうだよ、「Dr.Eil」も「高地優吾」も偽物。作り者で、ここには存在しないんだよ」
視線を追う。ジェシーが外したらしい、拘束の解けた「彼」は、どこかから取り出したシートを取り、丁寧に顔を拭く。
「不思議だよね。化粧ってさ、男性でも極めちゃったら本当に誰が誰かわからなくなるんだよ」
森本「高地…」
そう場を和ませるような声で言う「彼」の素顔は、もう何度も見て来た「高地優吾」の顔だった。