Kleinod Ⅴ (ページ18)

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手分けしながら探していた1階の2人は、その報告を受けて急いで2階へと続く階段に向かった。
どうやら森本の方が近かったらしい、田中の言う通り、彼の下の名前を言うと黒服は人当たりのいい笑みを浮かべて通してくれた。
2階に上がった彼は、その絢爛具合に圧倒される。
圧倒されている間に、ジェシーも辿り着いたようだ。

ジェシー「wow…本当にここに高地がいたの？」
森本「いたんだよ、樹！捕まえれた？」
応答はない、どうやら現在進行形で頑張ってくれているらしい。
森本「とりあえず、ルーレットのところを探そ」
ジェシー「そだね」

彼は2階奥だ、と言っていた。
奥の方へと向かうと、少し遠くで黒服の1人が倒れているのが見えた。
そしてそれを介抱している別の黒服の姿も。
森本「…ねぇジェシー…」
ジェシー「ぜーったいあそこじゃん！」

2人は走ってその場所へと向かう。
…待て、何だか静かすぎやしないか？
森本「ねぇ、おかしくない？」
ジェシー「何が！」
森本「だって、カジノだよ！？もっと騒がしいはずじゃん！」
嫌な予感が頭を過ぎる。スピードを速め、奥へと走る。

森本「…！」
嫌な予感、いいや自分が思っていた方ではなかった。まだ確信はない。
ただ、仄かに甘酸っぱい…ラズベリーのような香りがした。
森本「樹、能力使ってるの！？」
ジェシー「え！？」
応答はない。冷や汗が背中を伝う。

何故ここで能力を使う必要がある？
田中だって、今こんな(合法スレスレとはいえ)公共の場で「普通じゃない」力を使ったらどうなるかなんてわかっているはずなのに。
ふと、今まで考えていた違和が頭を過ぎる。
形容しがたい違和、自分は、いつもより「あれ」がうるさいからだと踏んでいたけれども。
何かが、おかしい。
黒服が倒れていた部屋の入り口に辿り着く。

「へぇ、こんな風に聞こえてたのか。……っはは、そりゃ「俺」の事嫌うわけだ」
疑惑が確信へと変わる。
ジェシーもその声を聞き取ったらしい。
いつもと同じはずなのに違う声。待って、いつから？まさか、…目覚めた時から？
森本「…………今、何て言った」
殴りかかりたい衝動を抑えて出た声は、見慣れた彼を振り向かせるには十分だった。