Kleinod Ⅴ (ページ14)

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ディスプレイ上での説得は、何とか上手くいってくれたようだった。
京本は最終的に持ち込めた譲歩案に、ほっと息をつく。
…別段彼とて、希死念慮を抱いた訳じゃない。ただ助かりたい訳でもない。
ただ、あそこまで必死なジェシーを、助けてやりたくて。
口では諦めの言葉を吐きつつも、現実を見ろと叫んでも、結局1番「夢」を見ていたいのは自分の方で。
天邪鬼な自分の言動に、罪悪を実らせつつも処刑を回避しきった事に背もたれにもたれかかり、息を吐く。

ジェシー「…大我」
思考を巡らせていると、遠慮がちなジェシーの声が背後からした。
京本「何」
ジェシー「…あのね、あのね大我…その、ごめん」
気まずそうに、近付く事もなく呟いた彼に、はぁ、と息をつく。

ジェシー「あのね、慎太郎が…違う、俺も、なんだけど…。こーちの事、探したいの、そしたら…また、「6人」になれるでしょ、だから、ね…」
こちらの様子を窺うように少しづつ言葉を紡ぐ彼に、京本はやっとジェシーの方を向いた。
京本「…夢見がちなところは、みんな一緒だね」
ジェシー「…みんな？」

目線だけでディスプレイを見ろと言わんばかりに指示すると、彼は申し訳なさそうに中へ入り、画面を覗き込む。
ジェシー「…謹慎処分？」
京本「高地の事、話したんだよ」
ジェシー「えっ」
京本「嘘をついた事は話してないけど。高地が行方不明になった、って」
ジェシー「…そしたら？」
京本「俺たちの処分は半年間の謹慎処分。但し3日以内に高地を連れ戻す事を条件として」
ジェシー「…もし出来なかったら？」
京本「その時は、…首切りだよ」

ジェシー「…これ、大我がやってくれたの？」
京本「だから、言ったでしょ。…結局、みんな夢見がち、なんだよ」
ジェシー「…――っ、たいがぁ～！！！」
どことなく嬉しそうなジェシーをあしらって、顔を背ける。
そのまま抱き着いてきそうだった彼を華麗に回避して、京本は松村と田中の様子を見に戻った。