#悲痛 ページ31
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「…ごめんね坊や、お兄さんは野菜が食べられないの。苦手なんだって」
「テメェ…!!」
ピキピキとこめかみに血管を浮き立たせる不死川さんに、私は視線で意図を伝える。
それが伝わったのか、彼は諦めたように溜息を吐いた。
「そ、そうなの…?」
「…ああ、だから俺は貰わねぇ。テメェが食べて大事な奴を守れるくらい強くなれよ」
「!うん、わかった!」
途端に目を輝かせた男の子に手を振り、私たちはその場を後にした。
「不死川さんって子供には甘いですよね」
「殺すぞ」
「ごめんなさい」
それでも笑いが堪えきれずにクスクス笑う私に、彼は仕返しとばかりに毒を吐く。
「そんなテメェは後輩にまで柱失格と言われてどうすんだ。柱稽古で強ェのは知ってる。が、ソイツを野放しにしてたら柱降ろされるぞォ」
「あー…美樹さんですか…」
だけど、杏香に怪我を負わせたのは私の責任。
それを指摘する彼女には非が無い。
まあ少し盛っている所はあるが…、、
「嘘をつく理由は知っているので止めはしません。柱でなくとも鬼は斬れますしね」
それに、杏香と無一郎が話しているところを見なくて済むし。
無意識のうちに視線を下げていた私に、不死川さんが口を開きかけたそのとき。
今一番聞きたくない声が耳に入った。
「あっ、Aと不死川さん!任務帰りですか?」
そう明るく声を掛けてきたのは、杏香。
そしてその隣に佇む無一郎。
「…杏香、」
「さっきは急に抜けちゃうから驚いたよ。だけど任務があったんだね、お疲れ様!」
そう屈託無く笑う彼女に、私は心が痛んだ。
「…背中、ごめん。杏香が庇ってくれたおかげで死なずに済んだ」
「ん?ああ、これくらい大丈夫だよ!」
案外つっかえるかと思った謝罪は、すんなりと出てきて。
言った私が一番驚いてしまった。
「オイ梅宮、無駄話してねェで行くぞ」
「あ、はい。じゃあね杏香、それと…時透くん」
「ッ!!」
私が上の名を呼ぶと、無一郎は悲痛そうな顔をして私たちから背を向けた。
グイッと杏香の腕を引っ張って行く彼に、どうしようもなく胸がキリキリと締め付けられる。
「……まァ、精々足掻けよ」
「はい…」
私の気持ちを全て察しているかのように、不死川さんはボソリ呟いた。
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Runa - 紅乱さん» 一気読みだなんて!めちゃくちゃ嬉しいです!杏香をそのように言ってもらえありがとうございます!! (2020年1月18日 11時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
Runa - 永久さん» 最後までお読み頂きありがとうございます!!貴方様のコメントで泣きます!!!!! (2020年1月18日 11時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - 完結おめでとうございます!!もう本当に!!泣きます!!!!! (2020年1月17日 17時) (レス) id: 75d8805815 (このIDを非表示/違反報告)
紅乱 - 今日見つけて一気読みしてしまいました!杏香ちゃん良い子すぎて泣ける…… (2020年1月16日 21時) (レス) id: 649e22ca45 (このIDを非表示/違反報告)
Runa - 雫さん» それなあああです!!こんな親友私もめちゃ憧れます! (2020年1月16日 18時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Runa | 作成日時:2019年12月5日 23時