#貴方です ページ25
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「……師範に何の用ですか?」
私は今、しのぶさんと別れ杏香がいる病室へと足を運んでいた。
何故か杏香と部屋を分けられ、未だ彼女に謝れていなかったのだ。
「杏香、もう起きてますよね?」
「…そうですが」
「彼女と話をしたいんです」
だが、部屋の前に美樹さんが立ち塞がった。
どうしてこうも突っかかるのかは謎だ。
何故こうも敵視されているのかも。
「………少し、移動しましょう」
まるで杏香には聞かれたくないように、チラリと部屋を見て彼女は歩き始めた。
…そういえば、
私って前から嫌われ?てたんだっけ。
「貴方、……霞柱と付き合っていますよね?」
「えっ?」
「私、二人が手を繋いでいるところを見たんです。師範には言いませんから、教えてください」
ーーバレてたんだ。
よりによって彼女の継子に。
そりゃそうだ、美樹さんは杏香を慕っているから。
「…はい、そうです。私と無一郎は付き合っています」
「!」
けどさ、
「だからといって、嘘を振り撒かれるのはハッキリ言って迷惑です」
任務には支障を出したくないから。
すると、美樹さんはこれ以上ないほどに顔を顰めた。
「……貴方が霞柱といると、師範が苦しそうなんです。捨て子だった私を師範は救ってくれました。だから、師範にはいつも笑っていて欲しい」
「それでも…!」
「幸せそうな貴方には、どうせ分からないでしょう!?恋も実らず、一生残る傷を負い、親友の貴方にも裏切られる…!
これじゃあ、師範が可哀想ですッ!!
私は師範に幸せになってもらいたい!!!」
美樹さんは泣いていた。
私は、何も声をかけることができなかった。
「貴方が竈門くんを好きだということも、
任務に無駄話をして遅れたことも、
上弦の参に私情を挟んで単独行動したことも、
嘘を吐いたのは全部私です。
貴方を苦しめたのも私です。
でもそれ以前に、師範を苦しめたのは貴方です」
悲しそうな瞳で、彼女はそう強く言い切った。
ーー本当だ。
私、自分のことばっかで杏香を苦しめてた。
杏香は私に謝られて嬉しい?
無一郎はこんな私と付き合って楽しい?
誰が幸せになれるの??
「……二度と、師範に近付かないでください」
そう言った彼女の顔が、
今も頭の中に鮮明に残っている。
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Runa - 紅乱さん» 一気読みだなんて!めちゃくちゃ嬉しいです!杏香をそのように言ってもらえありがとうございます!! (2020年1月18日 11時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
Runa - 永久さん» 最後までお読み頂きありがとうございます!!貴方様のコメントで泣きます!!!!! (2020年1月18日 11時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - 完結おめでとうございます!!もう本当に!!泣きます!!!!! (2020年1月17日 17時) (レス) id: 75d8805815 (このIDを非表示/違反報告)
紅乱 - 今日見つけて一気読みしてしまいました!杏香ちゃん良い子すぎて泣ける…… (2020年1月16日 21時) (レス) id: 649e22ca45 (このIDを非表示/違反報告)
Runa - 雫さん» それなあああです!!こんな親友私もめちゃ憧れます! (2020年1月16日 18時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Runa | 作成日時:2019年12月5日 23時