#髪飾り ページ13
.
.
ある日、杏香に外に行こうと誘われた。
「買い物しようよ!」
時々、分からないことがある。
私は大抵、嫌いな人とは必要以上に関わりたくない。
でも彼女は何故か、そんな私にも無邪気に笑いかけてくる。
「…うん、いいよ」
だから、こういうとき断りにくい。
私は仕返しをする、という決意はしたが何かあったらすぐに揺らいでしまうだろう。
絶対に曲げない心を持たないと、またやられる。
「(私だって、好きな人を誤解されたくない…!)」
ちゃんと好きだって、言いたい。
「見て、この髪飾り可愛くない?」
「うーん……けどまあ、杏香にはこっちが似合うと思うよ!」
「本当?」
じゃあこれ買います!と店主さんに言う杏香。
決断早すぎないか、と思い聞いてみると、
「だって、Aがそう言ってくれたんじゃん」
綺麗な笑顔でそう答えた。
その言葉に一瞬、私はこんな良い奴に仕返しするのかと迷う。
けどすぐに今までされたことを思い出し、自分は間違っていないと奮い立たせた。
「それは嬉しいなぁ!」
「ふふ、Aもお揃いにしよ?」
「じゃあどれにしようかな…?」
どれも魅力的で思わず魅入っていると、杏香が一つ手に取った。
「これなんかどう?」
「わっ、可愛い」
それは、桃色の牡丹を形取られた髪留めだった。
私も一目で気に入り、勢いのまま購入してしまう。
「私は菊で、Aは牡丹!」
薄緑色の杏香のと、桃色の私のを並ばせる。
ああ、着物の色と合っていて似合いそう。
無一郎も褒めてくれるかな?
「ね、これさ、任務のときも付けてようよ」
「でも万が一危険な目に遭ったら…」
「いいの!とにかく私はずっと肌身離さず持ってるから!」
余りにも意固地にそう言い張る彼女に、私は笑いが堪えきれなかった。
最初は真っ赤になって照れてた杏香も、途中から私につられて笑い出す。
「絶対、約束だからね!」
.
このとき、私は心の底から彼女を愛おしいと思えた。
仕返しも、
味わった苦痛も、
恋敵ということも、
全てを忘れて、ただひたすら笑いあっていた。
261人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Runa - 紅乱さん» 一気読みだなんて!めちゃくちゃ嬉しいです!杏香をそのように言ってもらえありがとうございます!! (2020年1月18日 11時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
Runa - 永久さん» 最後までお読み頂きありがとうございます!!貴方様のコメントで泣きます!!!!! (2020年1月18日 11時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - 完結おめでとうございます!!もう本当に!!泣きます!!!!! (2020年1月17日 17時) (レス) id: 75d8805815 (このIDを非表示/違反報告)
紅乱 - 今日見つけて一気読みしてしまいました!杏香ちゃん良い子すぎて泣ける…… (2020年1月16日 21時) (レス) id: 649e22ca45 (このIDを非表示/違反報告)
Runa - 雫さん» それなあああです!!こんな親友私もめちゃ憧れます! (2020年1月16日 18時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Runa | 作成日時:2019年12月5日 23時