◆ Is it a dream? ページ1
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『よぉ……久しぶりだな』
今、目の前に。
出来れば顔を合わせたくなかった『ヤツ』が、ニヤリと片方の口元だけを上げて俺を真っ直ぐに見つめている。
純粋そうな瞳をしているクセに、その上がった口元からは単純に物事を進ませてはくれないであろう雰囲気が感じ取れて、どうしてそんなにも挑発的なのか……。
あぁ……コイツ、苦手だわ……。
『苦手とか言うなよ……折角お前の役に立ってやろうと思って、来てやったんだろ？有難く思えよ』
腰掛けている位置が高いからなのか、両方の足をプラプラさせ。
少し開いた足の間に両手をついて、上半身をゆらゆらと揺らし。
その上半身を前傾にして上目遣いのようにこちらを見ている瞳は『興味津々』という感情をありありと伝えてくる。
『手伝ってやったんだからさ……感謝されても良い位だと思うけどね』
あぁ……お前は……。
『ヤツ』が目の前に現れてから、薄々そうではないかと巡らせていた自分の思考を。
こんなにも裏切って欲しいと願っていたとは……。
こんなにも後戻り出来ない状況に陥っているとは……。
『計画通りだろ？ソレと分からないように始めるんだったろ？……とは言え、全てが予定調和ではねえけどな……』
…………は？
只でさえ頭をフル回転させていたにも拘らず、『ヤツ』は更に思考を止める発言をしてくる。
お前の予定を狂わされるなど、今までに無かったんじゃないのか？
『俺は少しばかり背中を押してやっただけだよ……残念だけど、それだけ……それ以上は知らない』
それは、つまり……。
『ヤツ』も把握していない、何かが起こっているというのだろうか……それならば……。
『ま、放っておいて大丈夫みたいだけどね……俺としては意外だったけどさ？』
お前は一体、何を知っているんだ？
俺の前に現れたのなら、どうして断片的な情報しか寄越さない……それに、手伝うってどういう事なんだよ……。
『まだお前には早いよ……コッチの事は気にするなよ……どうせ−−−んだからさ？』
ふん……と、鼻で笑う音が聞こえたかと思うと、視界がゆらゆらと揺れ始め。
『じゃあな、−−−……』
『ヤツ』の声だけが暗闇に響いて……気が付けば、自分のベッドの上だった。
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作者名：黒衣
| 作成日時：2017年5月31日 15時
