◇7 ページ36
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『……私の、記憶？』
「そ……お前の記憶」
『……そうなんだ』
「そうなったとしたら、お前の周囲にいる人達の、俺に関する記憶は全部消させて貰うから安心してよ」
まるで子供をあやす様に私の頭を撫でて、彼は変わらず微笑みを浮かべていて。
どうしてか、私の手を握っていていた指にピクリと力を入れていた。
『……全部』
「うん、全部……俺と出会う前の、ただただ平和にアホみたいに生きてた頃のお前に戻るだけだから」
『アホって！！』
「んふふっ……だってそうでしょうよ、何も知らずにさ、安穏に、鼻水垂らして生きてんだから」
『垂らしてない！！』
「くくくっ！！」
握っていた私の手を放すと、両手を後ろについて、その腕に体重を掛けながら、笑って天井を仰いだカズは。
耳の縁を赤くして、瞳をキラキラと輝かせていて……ただでさえ薄茶色に見える瞳が、更に綺麗に見えた。
「まぁ、安心しなさいよ」
『……何をよ』
「もし、俺がお前の記憶を消さなきゃいけなくなったとしても、俺のモンだってシルシは消えないから」
『だったらなに』
「虫ケラ共からお前を守ってくれる」
私の方に顔を向けたカズの瞳は、やっぱりキラキラ輝いてて。
くるんと上がった口元は、カズが微笑んでるように、私には見えた。
「ね？そんなにないでしょ？」
『……うん』
「あともういっこあるんだけど」
『うん』
「ソレはまだ関係無いから……もし、必要になる時が来たら、ちゃんと俺の口から説明するから」
スッと私から視線を外したカズは、相変わらずくるんと口元が上がってるように見えて。
実際、どんな顔をしているのかは分からなかったけれど……私には微笑んでるように見えてたんだ。
『……分かった』
「そしたら、俺と契約ってコトでＯＫ？……それとも、やっぱ止めとく？」
『……死ぬほど吸わない？』
「ソレ、契約結ぶ意味ないでしょ」
『……痛くしない？』
「この間の、痛くなかったでしょうよ……まぁ、アナタが痛い方が好きだって言うなら痛くしてあげても良いですけど？」
『全力で遠慮したいです』
「んふふっ……あと、聞いとく事は？」
『……ホントに助けてくれる？』
一瞬、きょとんとした彼は。
くくくっ……と笑うと、私の頭をわしゃわしゃにして言った。
「当然でしょ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 876人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒衣(プロフ) - すいれんさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けたようで嬉しいです♪ 不定期更新ゆえ、お待たせしておりますが…(汗) 翔さんと歩美さんを気に入って頂けて嬉しい＆私もあのふたり好きなんです♪ また楽しんで頂けるように頑張りますね！ (2018年9月19日 2時) (
レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
すいれん(プロフ) - とても楽しく見させて頂いてます。次の松本さんの回がとても楽しみです！特にお気に入りのカップルが櫻井さんと歩美さんです。これからも頑張ってください！ (2018年9月15日 21時) (レス) id: a60a572cae (このIDを非表示/違反報告)
黒衣(プロフ) - ジュンさん» 小悪魔黒服サン、少し淋しい事を伝えてましたが…そんな事にならないと良いですよねぇ…。激甘でも振り回されても良いとは…(確かに！と思ってる)楽しんで貰えて＆私も好きな話なのでホント嬉しいです！(*'ω'*)♪ (2017年7月18日 13時) (レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
黒衣(プロフ) - ぐちこさん» こんにちは！お待たせしてます(汗) 小悪魔さんが小悪魔してます♪彼の言葉選びは秀逸なので近付けられないのが心苦しいですが、するっと潜り込む術は私も欲しいです。そして私の所にも来て欲しいです(おい) (2017年7月18日 13時) (レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
ジュン(プロフ) - 小悪魔…なんか少し淋しい事言ってましたね。記憶を消されるような事がおきなきゃ良いなと思います。とにかくあの小悪魔君が決めたオンリーワンなので、激甘でもいい！色々と振り回されても大丈夫！とにかくこのお話大好きです！ (2017年7月17日 20時) (レス) id: 4c513d08fd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
