◇3 ページ32
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あのクラブの夜。
いつ眠ったのか……それとも気を失ってしまったのか……。
私は見知らぬ一室で目を覚ました。
フッカフカのベッドは、まるで真綿に包まれているようで……。
その中に見つけた香りは、あの時、私を包んでいた腕の中で嗅いだ匂いと一緒のものだった。
上半身を起こして室内を見渡せば……そこは必要以上にモノの無い部屋。
板張りの床と白く塗られた床、窓の外では葉を茂らせた枝が風に揺れている。
自分が寝せられていたベッドは一人で使うには大き過ぎるサイズで。
壁面に置かれた大きい本棚には、たくさんの本とＤＶＤらしきケースが詰め込まれていて。
ローテーブルとクッション……そして、その場には不釣り合いな位に大きな画面。
そのＴＶからは幾つかのコードが伸びていて、ＴＶ前の床には、雑に幾つかの機械が置かれていた。
体を起こしてソファに近寄ってみたけれど……ソファの上どころか室内には、この部屋の持ち主の姿は無くて。
代わりに、ソファにはジャケットが雑に放り投げられていた。
誰かが居た……それはローテーブルに置かれたグラスとウイスキーの瓶、揉み消された何本かの煙草が物語っていて。
室内のそこかしこから、彼の香りを嗅ぎ取ることが出来てしまって……どうにも落ち着かない。
自分のしていた腕時計を見れば、朝もまだ早い時間で。
どうしようかと思いつつ、部屋の扉を開けた。
.
ギィィィ……と古い木製特有の音を立てて開いた扉の向こう、左側に伸びた廊下。
廊下に出て周囲を見渡せば、少し薄暗い照明と床も壁も濃い色の木に少しの閉塞感を受けて、両腕を摩る。
私が出てきた部屋は突き当りだったようで、右側は壁になっていて。
廊下に立つと、似たような扉が左右に３つずつ……合計で６つの扉があった。
その扉たちの先、廊下の突き当りには下に向かう階段があって、階段の下からは陽の光が漏れて霞んでいるようだった。
そしてその先からほんのり良い香りが漂ってきて……それにつられるように私は階段を下りた。
階下に辿り着けば、長い年月をかけてその色を濃くしたんじゃないか……そう思わせるような木製の床と壁。
その先に足を進めれば、広いスペースが目の前に現れて、その光景に私は驚きを隠せなかった。
そこは、友達の間でも話題になっていたレストランで、私も一度来た事があった場所だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 876人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒衣(プロフ) - すいれんさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けたようで嬉しいです♪ 不定期更新ゆえ、お待たせしておりますが…(汗) 翔さんと歩美さんを気に入って頂けて嬉しい＆私もあのふたり好きなんです♪ また楽しんで頂けるように頑張りますね！ (2018年9月19日 2時) (
レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
すいれん(プロフ) - とても楽しく見させて頂いてます。次の松本さんの回がとても楽しみです！特にお気に入りのカップルが櫻井さんと歩美さんです。これからも頑張ってください！ (2018年9月15日 21時) (レス) id: a60a572cae (このIDを非表示/違反報告)
黒衣(プロフ) - ジュンさん» 小悪魔黒服サン、少し淋しい事を伝えてましたが…そんな事にならないと良いですよねぇ…。激甘でも振り回されても良いとは…(確かに！と思ってる)楽しんで貰えて＆私も好きな話なのでホント嬉しいです！(*'ω'*)♪ (2017年7月18日 13時) (レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
黒衣(プロフ) - ぐちこさん» こんにちは！お待たせしてます(汗) 小悪魔さんが小悪魔してます♪彼の言葉選びは秀逸なので近付けられないのが心苦しいですが、するっと潜り込む術は私も欲しいです。そして私の所にも来て欲しいです(おい) (2017年7月18日 13時) (レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
ジュン(プロフ) - 小悪魔…なんか少し淋しい事言ってましたね。記憶を消されるような事がおきなきゃ良いなと思います。とにかくあの小悪魔君が決めたオンリーワンなので、激甘でもいい！色々と振り回されても大丈夫！とにかくこのお話大好きです！ (2017年7月17日 20時) (レス) id: 4c513d08fd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
