◇16 ページ16
◆SIDE-YOU◆
『和也……』
「やっと見つけてくれた」
そう言うと、そっと抱きしめられた。
私が悲しい時に、和也はよく抱きしめてくれていた。懐かしい腕。
体の大きさは変わったけど、その抱きしめ方は変わらない。
＜頭のスイッチ切っても
今は誰にも聴こえない＞
そう言うと、驚く私に。
「………何から話す？」
んふふと悪戯っ子みたいに笑う。
それから和也が教えてくれたのは。
自分のチカラが「バリア的な？」モノで、壁みたいなモノを作れる。
それで守る事も攻撃する事もできて。それを人に使うと「思うように動いてくれる」らしい。
急に居なくなったのは、「さっき逢ったバカ」を「外の世界」から守るためで、オトナと言う事聞く約束しちゃったから、と窓から見えるあの樹の根元に瞳を向けた。
翔ちゃんも大野さんも仲良し、あの２人もワタシタチと一緒だよ、と言った。
それに、と私を見て。
そのうち翔ちゃんと大野さんがAのチカラ判るだろうと思ってたし、と続けた。
「ワタシ、ね？
小さい時から、
世界は色褪せて視えてたんだ」
哀しそうに微笑む。
「だから色が薄いのかもね」
自分の髪を引っ張って見せた。
瞳も肌も、そのせいかもしれない。
「でもね、オマエは光ってたの」
そう言うと、和也は、ぽんぽんっと、私の頭を優しく撫でる。
≪でも翔くんは「色がない」って…≫
なるほど……、という顔をして、ニヤッと悪戯な微笑みを見せて、「ソレ翔ちゃんに内緒♪」と唇の前で人差し指を立て、しーって言う。
「逢いに行っても良かったんだけど」
自力で何とか辿り着いて欲しかった、そろそろ見つける頃だから…と。
同じ学校で、一緒に入学する事も知ってて、予測して放置してた、と笑った。
「思い出してくれてありがと」
ぽんぽんっと、私の頭を優しく撫でる和也は、優しい表情で。
≪思い出して欲しかった？≫
そう想ったら、俯いた彼の耳が少しずつ赤くなっていった。
「見んなや！」そう言うと、私の頭をグイっと横を向け、もう片手で自分の顔を覆っていた。
それも昔から変わらない和也がよくやるヤツ。
そして、和也が今いる「建物」のこと。
最初から名前があったのは６人だけ。
忘れてるのは、あと２つ。
見たら、思い出す。
１つは、忘れてていい。
もう１つは、必要なモノかも。
そんな事を教えてくれた。
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