◇15 ページ15
◆SIDE-YOU◆
不思議な子だった。
細く色白の体、薄茶色の瞳、サラサラの金髪。
「練習」してる場所に「治療」しに行くと、その子の時だけは不思議だった。
いつも髪の色みたいに光ってて、同い年位なのに綺麗だなって思ってた。
大体はみんな怪我してるのに、その子の時だけは、どっちも怪我はしてなくて。
相手の子だけエネルギー切れて倒れてる。その子は飄々と椅子の上に体育座り。
離れた場所から見てるだけ。
そんな感じ。
「治療」してる時も、その様子を見てるだけで。「なんだろう？」そんな事をいつも思ってた。
ある時、「治療」が終わったら、その子が傍に立っていて。
床に座る私の横にしゃがんで、
「キミが噂の、お姫様？」ぽんぽんっと、私の頭を優しく撫でた。
『お姫様じゃなくて、Aだよ』
そう言うと「やっぱりじゃん」と言って「ワタシ、和也」と綺麗な顔で微笑む。
今思えば、その年齢じゃない私達に名前があるのは不思議だった。
和也は顎に手を当てて、考えてるような仕草をすると、上の小窓に向かって話しかけた。
「ねぇ、ワタシ、
この子と一緒に居たいんですけど」
オトナ達が何か言ってるけど、口だけパクパクしてるみたいに聞こえてこない。
「代わりに今よりはアナタタチの
言う事聞いてあげますけど」
オトナと同等みたいに渡り合ってるその姿が格好良くて、和也と仲良くなるのに時間は掛からなかった。
私の「治療」と和也の「練習」以外の時間は、ずっと一緒にいた。
勉強も教えてくれたし、ココの事も教えてくれた。
生まれてきたチカラの使い方とか、それをコントロールした方が良いって事も。
それと私のチカラの事はオトナには秘密って事も。
不思議と和也だけは、考えてる事が分からない時があって。
私の考えてる事が和也に分かるように感じる事もあって。
何年か居心地の良い日々を過ごしていた、ある晩。
眠りに落ちていく私に和也が言った。
「またね、お姫様」
次の日、和也は消えた。
ココのどこを探しても、和也は居なかった。
私は「治療」をする事が出来なくなって、和也の部屋にこもって、何日も泣いていた。
泣き過ぎて、疲れて。
眠りに落ちていくその時、和也の声が聴こえた気がした。
「バカだねぇ、アナタ…」
ふっ、と唇に何かが触れて。
その日から和也は私の頭の中からも消えた。
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