◇11 ページ11
◆SIDE-YOU◆
＜Aちゃん、大丈夫だよ＞
≪……智くん？≫
＜……オレ、相葉雅紀っていうの＞
声が聴こえた。
ふと彼を見た。
あの綺麗な瞳から、ポロポロと涙を流していた。
＜だから大きいヘッドフォンなんだね＞
＜だからリーダーが教えたんだね＞
＜だから表情が少ないんだね＞
彼は視線を地面に落とし、まだ涙を流している。
その姿はとても綺麗で、儚い。
大人のようにも、子供のようにも見える。
＜リーダーは知ってる
オレはね、翠なんだ＞
相葉雅紀と名乗ったその人は、手の甲で涙を拭うと、いつもの向日葵みたいに笑った。
＜イイコト教えてあげる
オレがここに居る時にね
音楽室に向かってごらん
きっと味方になってくれる＞
そう言うと、旧校舎の３Fを指差して、またね♪と手をヒラヒラさせ、彼は校舎に向かって歩き出した。
その後を数羽の小鳥たちが追いかけ、囀っていて、まるでその鳴き声に合わせるかのように、鼻歌を歌っていた。
＜他の事はオレがキミの声を
聴けるようになったらね？
だからまたここにおいで？＞
そんな謎だらけの言葉を残して。
その夜。
顔を見ながら話を聴きたいと思ったから、私は智くんの部屋の前に向かった。
智くんは来る事が分かっていたかのように、ガラスの前に座って微笑んでいた。
＜少し聴けたみたいだね＞
≪うん、そうなんだけど…≫
＜その前にAちゃん＞
＜スイッチ直して欲しいんだ＞
≪智くん、ソレどういう……≫
背筋がゾワッとした。
冷汗が出てきた。
何なら少し震えてる。
それは何故かというと。
背後から恐ろしい殺気を感じるからで。
智くんもソレに気付いたようで、すぅっと椅子を回転させて私に背を向ける。
おそらく。
恐ろしく綺麗な顔を歪ませて、腕を組んで今にも舌打ちしそうな、帝王様が睨んでいらっしゃる。
＜どうやらお前は
アクシデントに遭遇すると
頭のスイッチが切れるようだ
そしてそれはまだ切れている
智くんも聴こえてるよな？
こういう場合においては
とても有難いモンだなぁ？＞
私達は、振り返る事ができず。
床に正座するように指示され。
背中に怒りオーラを感じたまま。
「報連相について」や「まずは計画」について、おそらく小一時間ほど、有難いお説教を翔くんから頂いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 71人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
