◇18 ページ18
◆SIDE-YOU◆
数メートル離れた所にある敷地の入口、その頑丈な門の所に見慣れない男性がひとり。
キャップを深めに被り、すらっと細身の長身、半袖のシャツからは程良い筋肉のついた腕が見える。
その男性は「建物」を眩しそうに見上げていた。
その横顔には、暑さからか汗が滴っていて、彫りの深い綺麗な鼻筋とフワッとした黒髪。
ドクン。
大きく胸が鳴る。
なんだろう、これ。
「……………中に入れ」
低い、怖さも含んだ声。
そう言うと、翔くんは私を背中に隠すように姿勢を変える。
『どうして？』と私が言うのと、あの男性がこっちを見て瞳を煌かせたのは、ほとんど同時だった。
キィン。
目の前に和也の作った見えない壁。
その向こうには背中を向けた翔くん。
翔くんの横には、いつの間にかその男性がいた。
翔くんに強く肩を掴まれると、その男性は腕を組んで翔の方を向き、ふっと微笑んだ。
「ワタシはもう１回見たいけどね」
いつの間にか私の横にいた和也が言った。
『……もう１回？』
「そう、アナタのキレたとこ」
『……キレたとこ？』
「そう、キレイなアナタ」
「翔ちゃん、見たくない？」
眉を歪ませた翔くんが視界の端に映る。
「……………お前ら」
翔くんは眼鏡を外し、瞳が、紅くゆらっと揺れる。
「ヤバイ！」という表情をしたその男性がふわりと浮かび上がり、距離を取る。
翔くんの手が燃えている。
正確には「炎を作りはじめて」いる。
足元からは、孔雀の羽のように炎が広がる。
パチンと指を鳴らすと、その炎が槍のようになって男性に向かう。
その炎が作る風圧と、浮かび上がった拍子に、その男性のキャップが飛ぶ。
頭の中で、ピシッと音がした。
翔くんの炎の向こうには、私に似た顔。
翔くんを見て、嬉しそうに笑うと、瞳が紫に揺れた。
どうして忘れてたの？
今までどこにいたの？
最後に覚えてるのは。
「おっ？キた？」って和也。
「マジで！？」って雅紀くん。
「凄ぇな」って笑う智くん。
「うぜぇ」って顔の翔くん。
「A！！！」って叫びながら
手を伸ばす、潤。
その先は、視界が白くなった。
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