猟奇的なキスを私にして (ページ28)

今日:6 hit、昨日:3 hit、合計:38,633 hit

last drama ページ28

俺の近くの公園では、もう木の葉が色づき始めた
少し寒くなってきたな
人もいない公園のベンチでボーッと座っていると、カサっと背後で音がした

愛しい彼女の気配

A「…用事って何」

篤人「こっち座んなよ」

離れたところに腰をかけ、ぎゅっと腕を組んで固まったまま。
俺は立ち上がって、彼女の前に跪いた
しっかり目を合わせると、少し震えていて、怯えてもいる。
申し訳ないな
あんなことしたから、当然だけど。

篤人「初めて人のこと、こんなに好きになったんだ。…ごめん。忘れたかったんだけどさ…忘れられなかった…」

ははっと笑ったつもりが、渇いたカラカラの声しか出てこない
力がこもった彼女の手を振りほどき、そっと両手で包み込む
それからコツンとおでこをくっつけて、鼻の先を寄せた

篤人「Aに夢中になる俺の気持ちを捨てられない。消したくないんだよ」

A「馬鹿だね」

篤人「うるせぇ」

A「私絶対に振り向かないよ」

篤人「そんなのわかんねーじゃん」

A「ないよ」

篤人「…いつか、思い出に変えられるかな」

A「わからない」

篤人「でもさ…」

はぁっと深く息を吐く
二人の間に温もりが立ち込める

篤人「すげぇ好きだよ」

すげぇ好き。
笑っててほしい。幸せでいてほしい
でもやっぱ俺が全てを包み込んでやりたかった
諦めたいけど諦められない
俺の中からきっと抜けてなんか行かない
…忘れられないならさ
まぁ、おれはここで執念深く、腕広げて待ってるよ

この恋の答え
俺は、もう無理に忘れることをやめた
今は重いかもしれないけど、そのうち淡い思い出になるかもしれない
…考えもできないけど

A「もう行くね」
Aはきっと涙をこらえてる
でも俺のために泣かない。
優しくAが手を振りほどいて、俺に背を向けて進んでいった

いつか「俺を振って後悔したろ？」って言いたいけど、きっと「あたしじゃなくて満足できてんの？」って言うでしょ

……猟奇的な俺の彼女。
手に入ることなんてない、俺の彼女

篤人「めんどくせー…」

彼女に振り回される俺はかっこ悪い
でも恋愛に一生懸命な俺が嫌いじゃない

篤人「麻也…飯誘おうかな」

来た道を歩いて向かう
足取りは前よりずっと軽い