猟奇的なキスを私にして (ページ14)

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fourteenth kiss ページ14

南野「どうして？」

声が震える
ばれてるかもしれない
かっこ悪いぐらい顔が固まる

A「私ね。絶対に酔ってても記憶は失わないの」

南野「じゃあ覚えてるんですよね」

A「うん」

南野「いつもあーなんですか？」

一瞬動きが止まり、うつむいてしまう
それから絞り出すように言った

A「そんなわけ…ない」

南野「えっ？」

A「あのね。私は…嫌いな人なんてキスしない。絶対に」

南野「じゃああのときの先輩は？自分から試してみる？とかいって誘ってたじゃないですか」

子供みたいに反論した

A「あれはドーナツ一口食べるっ？って意味だったの。だから…あんなことされるなんてわかんなかったの…」

Aさん…
南野「…無防備すぎる」

なんやねん
もう…

A「あのね……たっ…たくみ」

Aさんが俺をじっと見て、
真っ赤になりながら呟いた

A「私いいに来たの。……なにも言わないまま終わりたくないから」

唇を噛みしめる
夜風が吹いて、Aさんのシャンプーの香りがする
指先に感覚がなくて、しびれているようだ
頭の中まで痺れて来たようだ
Aさんの言葉が心臓を直接揺らした

A「……‘でも’とか、‘だけど’とか。言い訳ばっか考えてたけど、結局はね。
私、ずっと拓実のことばっか…拓実のことしか考えてなかったの」

視線が絡み合う

A「好きよ」

言葉の優しさとは裏腹に、雑に襟首をつかんで引き寄せられ
2度目のキスをした
夢みたいだ
またこうして触れられるなんて…

好きだ
彼女は俺の心を振り回して、理不尽だ
それでも、君の魅力は俺には充分すぎる

すべて………すべてがほしい

目の前から少し離れる彼女を離したくなくて、腰をつかんで目をしっかり見る

南野「なんで俺なの？俺でいいの？」

A「私ね、ずっと…。セレッソに取材に来てからずっと、拓実ばっかみてて。
勝手に心の中で呼び捨てなんかしてた。
本当に気づいたら、頭の中すべてを支配してた」

嘘みたいだ

A「最初はすごいなって尊敬だったのかもしれない。若いのに、すごい人だなって。でもね、気づいたらそんなの飛び越えた、大きな感情が生まれてた」

なによりも美しく、俺の腕の中で微笑む

A「大好き。大好きなの」