61.地獄絵図 ページ21
何が何だか分からぬうちに、少女の体は床に叩きつけられていた。
｢いっ……！｣
衝撃と、一瞬遅れて鈍痛が走る。
痣になったに違いない、しかしハッとして周りを見ると、それどころではなかった。
−−う、うぅ……。
−−助けて……。
−−痛い……痛い……！
｢ひ、…………！？｣
地獄絵図だった。
ビルの瓦礫に押し潰され、あるいは満員電車さながらの人の重みで潰され、あるいは銃弾を浴びて。
少女の打ち身など、かなり幸せな方だった。
先程まで多くの審神者と近侍が立ち往生していたそこは、血の海になっていた。
ある審神者は、折れた近侍を前に呆然とし、ある近侍は息のない血塗れの主を抱いて必死に呼びかける。
そして追い討ちをかけるようにやってきた遡行軍を前に、辛うじて立っていられた刀剣達が応戦していた。
｢……ッき、清くん……！｣
少女は我に帰って、清光を探す。
先程までコートの裾を握っていたが、押し潰された衝撃で離れてしまっていた。
噎せ返る血の匂いと瓦礫を退けて、黒い頭を探し出す。
加『あ、るじ……？』
｢−−−！
き、清くんッ肩……それに、足が……！｣
清光は、瓦礫の中でうつ伏せになっていた。
少女の姿を写した瞳は、出血の為か、朦朧としていた。
少女は細腕で、清光の足を潰した瓦礫と、そして...既に息のない、名前も知らない審神者の体を退けていった。
加『あるじ...逃げ、て……。』
｢何言ってるの……早く帰って手入れするから！
私につかまって！｣
銃弾を浴びたのだろう、血濡れで動かない右肩には触らないように、少女は清光の体を支えて立ち上がった。
一部の短刀よりも背の小さな少女にとって、清光を支えるのは簡単な事ではない。
フラつきながら立ち上がる、するとそこに。
｢遡行軍……！｣
加『−−−主、危な、』
咄嗟に清光が庇おうとするが、利き腕である右腕は肩をやられたことで動かない、片足が潰れたせいでそもそもまともに立てない。
−−最悪だ。
清光が絶望する目の前で、遡行軍の刃が、少女の首を狙う。
恐怖で体が動かない。
……次の瞬間。
加｢オラオラオラァッ！！！｣
少女の首を掠めるほんの数ミリの所で、遡行軍は灰塵に帰した。
｢……加州...。｣
抜刀した加州が、少女と清光を守るように、立ちはだかっていた。
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なつき - コメント失礼します。本当に面白かったです！過去に謀反を起こしてしまったけど最後まで主を守ろうとした加州、かっこよかったと思います！そして清光。主の事を思っていたからこそ距離を置いていたという所にキュンとしました！これからも頑張ってください！！！ (2019年3月29日 21時) (
レス) id: 096c0293d8 (このIDを非表示/違反報告)
… - いい作品でした… (2019年3月26日 6時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
まりえもん。(プロフ) - 胸が苦しいです...、最後に清光くんの健気な主を守りたいという気持ちが本当に泣けます...素晴らしい作品を作者様、ありがとうございました (2018年12月9日 9時) (レス) id: 327421a364 (このIDを非表示/違反報告)
湖@清光可愛い鯰尾君可愛い亀ちゃん大好き！！！ - そして最後もう一振りの清光…くっついて良かったです！やっと付き合えたね！おめでとう！！！って感じです。凄く良かったです！ (2018年1月16日 0時) (レス) id: 073b3b6cdc (このIDを非表示/違反報告)
湖@清光可愛い鯰尾君可愛い亀ちゃん大好き！！！ - 面白過ぎです！滅茶苦茶感動しました！泣きました…。これからも頑張って下さい！応援して居ます！この作品…大好きです…！清光が折れた時、いくらだめな事をしていても何で折れちゃったの！？って泣きました。 (2018年1月16日 0時) (レス) id: 073b3b6cdc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：弓月 | 作成日時：2017年12月3日 1時
