51.本音 ページ11
刀と審神者の娘に産まれて、少女には審神者になる以外の道がなかった。
それを、一度否定された。
目の前で父を殺され、生きる道を失くして。
それでも、偶然やって来た本丸の刀の達に受け入れられて、また生きる道を得た。
一人前の主として扱われることが、とても嬉しかった。
唯一心にぽっかりと空いた穴は、父や前の本丸の刀剣達が生きていたなら、自分を褒めてくれたのだろうか、という思い。
−−十歳で、本来受けるはずだった愛を奪われた少女は、空虚な心を持て余して大人になった。
こんなにも毎日が楽しいはずなのに。
こんなにも皆は慕ってくれるのに。
私は何も返せない。
返せるようなものを持っていない。
｢………………。
……人払いするようにって、頼んだんだけど。｣
加『...うん、されたよ。』
｢だったら……出てってよ。｣
いつの間にか、執務室に清光がやって来ていた。
少女は振り返ることなく、追い出そうとする。
｢出てって...って言ってるでしょ。｣
加『それは無理。』
｢私今、貴方にどんな酷いこと言うかわからないよ。｣
加『それでもいいよ。』
｢私が良くないから出てってって言ってるのッ！！｣
少女が叫ぶ、それでも清光は立ち去らなかった。
清光は静かに少女に近付き、目線を合わせた。
少女の蜂蜜色の瞳は、涙に潤み、本物の蜂蜜と何ら変わらない煌めきを放っていた。
加『俺は今、嬉しいよ。』
清光の声はひどく優しくて、少女の鼓膜を優しく通り抜けた。
加『...主、やっと本当の気持ちを出してくれたでしょ。』
｢……え...？｣
加『今までの主ならきっと、辛くても俺のこと受け入れようとした。
...ううん、そうだったから、俺達の主になってくれた。』
何もかもかも失ったばかりの、幼い少女。
そんな少女が辛い気持ちを堪えて、ボロボロの自分達の主になってくれたから、今この本丸はこんなにも幸せな毎日を送れている。
加『こんなに主がはっきりと嫌だって言ったの、俺は初めて聞いたよ。』
｢……私は、最低だよ。｣
加『どうして？』
｢私、加州と話してケリをつけるって言ったのに...無理だった。
私はやっぱり...前の本丸の事が忘れられない……。
前の本丸の、父様達の、審神者で居たかった……！｣
少女の、本当の本音が、やっと声になった瞬間だった。
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なつき - コメント失礼します。本当に面白かったです！過去に謀反を起こしてしまったけど最後まで主を守ろうとした加州、かっこよかったと思います！そして清光。主の事を思っていたからこそ距離を置いていたという所にキュンとしました！これからも頑張ってください！！！ (2019年3月29日 21時) (
レス) id: 096c0293d8 (このIDを非表示/違反報告)
… - いい作品でした… (2019年3月26日 6時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
まりえもん。(プロフ) - 胸が苦しいです...、最後に清光くんの健気な主を守りたいという気持ちが本当に泣けます...素晴らしい作品を作者様、ありがとうございました (2018年12月9日 9時) (レス) id: 327421a364 (このIDを非表示/違反報告)
湖@清光可愛い鯰尾君可愛い亀ちゃん大好き！！！ - そして最後もう一振りの清光…くっついて良かったです！やっと付き合えたね！おめでとう！！！って感じです。凄く良かったです！ (2018年1月16日 0時) (レス) id: 073b3b6cdc (このIDを非表示/違反報告)
湖@清光可愛い鯰尾君可愛い亀ちゃん大好き！！！ - 面白過ぎです！滅茶苦茶感動しました！泣きました…。これからも頑張って下さい！応援して居ます！この作品…大好きです…！清光が折れた時、いくらだめな事をしていても何で折れちゃったの！？って泣きました。 (2018年1月16日 0時) (レス) id: 073b3b6cdc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：弓月 | 作成日時：2017年12月3日 1時
