【企画小説】契約獣と魔術師たち (ページ8)

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第7話:國武直樹ページ8

昨日、シュッツの秋風とやりあって取り逃がしちまった。あの野郎、幻覚を使うはずなのにオレには一向に効かねぇ。なんでなんだ？
おまけに戻って寝たはいいが仮眠程度の時間しか寝れてねぇし。しかたねぇから散歩でもして寝れそうな場所でも探しに行くか。

「と思って出てきたは良いが寝れそうな場所なんてどこにもねぇじゃねぇか」

あーっ、くそっ。むしゃくしゃして頭を掻いたら自分が噴水の近くにいることに気が付いた。
運の良いことに東條の姿も見える。なんで彼奴が此処にいやがるんだ。
そんな疑問も抱きながら額のゴーグルを下におろして彼奴を見る。大抵の魔術師は近くに契約獣を連れているはずだからな。

「……いた」

彼奴の肩の上にいる蜘蛛。確かあれが東條の契約獣だったはずだ。名前は……ティナとか呼んでいたような気がする。

オレはまだ覚醒しきっていない頭を緩く振ってそっと彼奴に近づく。どこから攻めるか、どう攻めるか考えねぇと。

一歩。また一歩。近づいていくと向こうから見慣れない人影がやって来る。まだ少年っていったところか。こんな時間に噴水に来るなんて間の悪ぃ奴だ。

しかも東條の奴、こっちだこっちと手まで振ってやがる。待ち合わせみてぇだな。

「おい、東條」

「ん？」

オレの声に振り向いた東條は顔を顰める。なんで今なんだ、とでも言いたげなその顔にオレは眉をひそめた。待ち合わせ相手とオレが会ったら悪ぃ事態なのか？

そんなオレとは裏腹に東條は肩に向かって何事か呟くとくるりと踵を返す。

「おい待てって」

咄嗟に追いかけて殴りかかる。勿論急所に当たるような真似はしねぇ。どっちかと言うと蜘蛛がいるところを狙ったつもりだ。肩でもぶちゃ嫌でもこっちを向くだろうしな。

まぁ、オレの推測通り向いてはくれたが、距離を取られる。相変わらずやる男じゃねぇか。

「……全く今来るなんて。そういえばお前、この間女の子が行きそうな店にいたけど可愛い物が好きなのか？」

後ろを気にしながら言う言葉にオレの足は止まった。いつものことだが此奴は戦う度に揶揄って来やがる。

「ケッ、誰が可愛いもんが好きかよ。あん時はたまたま立ち寄っただけだ」

「熊のぬいぐるみを凝視していたけどなぁ？」

「うぐっ」

くっそ。言い返す言葉が見つからねぇ。いつもなら出てくんのに。なんで今は出て来ねぇんだよ。