空と海のあいだに【hirano.s】

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岸さんに返事をしようと思って、もう2週間が過ぎた。




またしばらく、こちらの会社には来ていないらしい。

ただ、もう一人の担当の方は、しょっちゅう社内で見かけるので、契約が白紙になったとかではないようだ。









返事を先延ばしにできて、ほんのちょっぴり、気が楽になった私は、いつもより少し早く会社を出て海人のお迎えに向かった。







雨がしとしとと降っていて、でも雲の切れ間からたまに太陽が射す、そんな天気だった。



保育園近くの、公園の前に差し掛かったとき、ふと目をやると





平野先生が立っているのが見えた。






先生は、雨の中傘もささず、じっと空を見上げていた。





しとしと降る雨が、先生の顔を、首を濡らし、

伝って落ちる。







私は平野先生から目が離せなくなってしまった。









平野先生に釘付けになりながらも、私は

「こっちを見ないで…」

「私に気がついて…！」

正反対の気持ちが交錯する。









ゆっくりと、先生が私の方を見る。

驚いたように目を見開き、そして

目を細めて私を見つめ、微笑んだ。







私は先生の目に射ぬかれて、その場から動く事ができない。





「海人君のお母さん！」


平野先生が私を呼んだ。






「こっちに…俺のところに…来てください。」








先生の声が少し震えて聞こえるのは、私の気のせいだろうか。





私はゆっくりと平野先生に近付いて行った。

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