K ページ6
屋上で見た彼は誰が見ても美しいものだった。日陰にいるため太陽光が少し当たっただけで、藤ヶ谷の周りは光り出して眩しい。
お弁当見る目は子供らしくて、可愛らしい。けれどその顔は繊細で睫毛が大人らしくとても綺麗だ。美しいのと可愛いのを二つ兼ね備えてる藤ヶ谷は、最強過ぎる。
現にも藤ヶ谷は、学校中でクールピンク王子と女子のファンクラブが密かにあるぐらいの魅力があった。時折見せる笑顔も美しくて、俺には一生向かれることは無いなと思う。
隣にいる横尾さんが少し羨ましく思ってしまう。そんな自分に呆れた。
ふいに彼と視線が絡み合う。
すぐに逸らされてしまったが、自分の心は満たされていき嬉しい感情と苦しい感情が混じり合った。藤ヶ谷と目が合うとどうしてもあの事を思い出してしまうのだ。
トラウマと言うほどまでは行っていないが、明らかにその出来事は俺の心を縛り付けていた。好きなのに怖い。
よく分からない気持ちに襲われた俺は空を仰ぐ。窓から見た空はあの時とは違い、とても眩しくて爽やかな群青色だった。
しばらく空を見ているとふと太陽が視界に入ってきて反射的に目をつぶる。しばらくして顔を元の位置に下げて、目を開けた。
「………あ、」
丁度その時に藤ヶ谷と横尾さんは屋上の扉に向かっていて、俺は不意に声を上げてしまう。出て行ってしまう彼の背中を見て名残惜しさを感じた。
「ほんと、綺麗だよな。クールピンク王子」
「え？……」
急に声を出した友達に驚いて、間抜けな声を出してしまった。友達の顔をのぞき込むと「あんま見んな」と手で顔を覆われてしまった。
「ふがっ！？……なにすんだよ！」
「お前があまりにも期待した目で俺を見てきたから惚れられると思って、」
「アホか！」
「そんな簡単に惚れねーよ」と言葉を残して再び前を向く。友達も顔を前に向けて俺達は屋上の隅々まで立てられている頑丈な緑のフェンスの背中を預けた。少しの沈黙後、友達が最初に声を上げた。
「もう一度言うけど綺麗だよな、藤ヶ谷」
「急に何だよ、てかクールピンク王子ってださくね？」
「そこじゃねーよ、女子が勝手に付けたんだろ」
「かわいそ、」
また沈黙になると二人そろって空を見上げた。今は時間がゆっくり進んでいるように感じる。まるで絵のように雲一つ無い空の上を飛ぶ鳥がその絵にいい味を出していた。
干渉に浸っていると時間が止まっているように感じる自分とは裏腹に授業が始まる鐘が鳴った。
「ちょっ、やべーじゃん！」
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作者名：supia | 作成日時：2021年10月19日 21時
