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T ページ31

頬に容赦なく吹き荒れる風は、とても痛くてとても冷たく感じた。息を小さく吐いてみると空気が白くなって冬らしさを連想させる。

校門の前で愛しい彼を待つのも恋愛少女漫画のようで何だかむず痒い。けれど、何分か経っても彼の姿が見られなかった。

少し不思議に思い、彼が所属しているサッカー部が練習をしている校庭に足を進める。けれど愛しい彼の背中はどこを見渡しても見つからなかった。

気になって二年生の下駄箱に赴くと彼のロッカーには上履きが無く、ボロボロに使い古された靴が入っていた。ということは今彼は校内にいる。

またあの時のように襲われてしまっているのではないかと不安に駆られて、上履きを履かずに裸足で階段を駆け上った。もちろん冷たい空気は下に行くので床は冷たくまるで氷の上を歩いているような気分になる。

足先が悴んで痛みを帯びている。今はそんな事を気にしている余裕はもう残っていなかった。息を乱しながら教室前に着く。

そこには○○という男がみつの頬に手を添えて至近距離で愛しい人に迫っているのが目に留まった。とても腹立たしい。今にも及んでまだみつに未練があると知ったからだ。

それにそんな迫られているのにみつは虚ろな目をして、上目遣いをしているのにも腹が立った。もしかしたら二人は通じ合ってしまっていると思うと有り得ない程の焦りが湧く。

その後は本能に任せてみつの手を取り、走り去っていた。後ろでみつを奪われたあいつがどんな顔をしているすら見たくない。

学校を駆け回っていた記憶はないが、いつの間にか校門に着いていて俺も手を掴まれている彼もとても息を荒らしていた。掴んだ意外とか細い腕を見るとほんのり赤くなっている。

助けたつもりが結局、自分も傷つけてるじゃないか。前みたいな事を繰り返したくない一心では、彼を守れないと思い知らされて悔しさのあまり下唇を噛む。

「……はぁ、はぁ。玉ちゃん。」

「……お勧めスポットってどこかな?」

あぁ。何でこの人は無理矢理腕を引っ張ってきた相手にもこんなに優しい笑顔を向けてくれるのだろう。どんなに自分が苦しめられても辛くなっても何食わない顔で笑ってくれる。

だからみつの事がここまで好きになったんだ。

俺はその言葉をしみじみと感じて、彼の腕を掴んでいた手の力を緩めてそっとさり気なく手を繋ぐ。すると彼はまさしくドキッとしたように顔をしかめた。

「俺に惚れちゃった?」

そんな彼につい笑みがこぼれてしまい、少し意地悪な言葉を投げ掛けてみる。彼は不機嫌そうに頬を膨らました。そんな所も好きだよと心の中で呟いた。

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作者名:supia | 作成日時:2021年10月19日 21時

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