7話 ビルの屋上にて ページ14
龍征くんが襲われた場所から離れ、私は今リリイさんと一緒にビルの屋上に立っている。
本名・スノウリリイ。
高身長で優しい金色の髪を持ち、高級そうな懐中時計を何時も首に掛け…何より穏やかな顔付きが印象的な男性。
リリイさんは色欲のサーヴァンプであり、真祖7人兄弟の末っ子。そして…私の恩人の１人だ。
リリイさんに言われた通り、救急車を呼ぶ。電話の途中でリリイさんを チラッ と見ると、まるで…何かを待っているかの様に事件現場を見ていた。
「リリイさん、電話終わりました」
「はい、ありがとうございます。此方も大丈夫そうです。…全くあの方は…のんびり屋さんで困ってしまいます」
優しい笑うリリイさんは、自分の口元に手を当て息を吐く。それはピンク色の霧となり、事件現場を包み込んだ。リリイさんのお得意な幻術だ。
「…はいっ。これで完了です。吸血鬼を目撃した方達は“交通事故”が起きたと思うはずです」
「お疲れ様です、リリイさん。でも、あの吸血鬼は良いんですか…？」
あの吸血鬼は倒れてはいない。また人を襲うかもしれない。しかし、リリイさんは「大丈夫ですよ」と微笑んだ。
「あの方がいるので大丈夫です」
「あの方…？ リリイさんの言うあの方って誰なんですか？」
「それは場所を変えてお話致しましょう。…さぁ、私たちも行きましょう」
私に手を差し出すリリイさんに私は「すいません、あとちょっとだけ…」と断り、しゃがんだ。そして事件現場を見る。たった今、龍征くんの元に救急車が来たみたいだ。
私の横にリリイさんもしゃがみ、ハンカチを取り出し、私の頬に付いていた血を拭いてくれた。
「救急車に連絡したのはAさんと言うことになっているので、学校では上手く話を合わせてあげて下さいね」
「はい…」
「…あと、彼の傷は命に別状はありませんよ。今から治療したら…きっと明日には学校には行ける程度ですね」
「…！ 本当ですか…？」
勢い良くリリイさんに顔を向けた私に、リリイさんは、ふふ… と、優しく笑う。そして「はい、大丈夫ですよ」と頭を撫でてくれた。
「そう、ですか…。 あぁっ、良かったー…」
「ふふっ…Aさんは優しい方ですね。
…さて、お友達も行った所で私達も“彼”の所に行きましょうか」
彼…？
あっ。忘れてた。
「リリイさん、今何時ですか？」
「えっ？ 今は…５時18分ですね」
リリイさんは自分の懐中時計を私に見せてくれた。 …ヤベェ…
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作者名：キタペン | 作成日時：2018年9月14日 18時
