5話 疲れている友人 ページ12
学校も終わり、空は段々と橙色へと変わっていく。
私は学校を出て、四ツ葉が指定する場所と時間に着くように駅前を目指す。
綿貫くんは最後まで「A! 吸血鬼には気を付けろよ!」と何度も忠告をしてきた。
「はーい」と軽く流したけど、今から吸血鬼に会いに行く。なんて、口が裂けても言えない。
駅前の近くまで来て、スマホの時間を確認する。時刻は4時50分。あと少しで喫茶店に着くのでちゃんと時間通りに着く。
…安堵した瞬間だった。
「あ、小鳥遊さん!」
聞き覚えの有る声が私を呼んだ。
振り向くとそこには黒猫を持ち上げながら私を呼んだ城田くん。それに龍征くんと虎雪くんが怪訝な顔で城田くんを見ていた。
龍征くんと虎雪くんとは余り話した事は無いが、綿貫くんから3人は自分の幼馴染なんだ、と教えて貰った事がある。
城田くんは私に ズイッ! と持っている猫を近づけ、「コイツ…どう思う」 と意味不明な事を聞いていた。
「可愛い、と思うよ」
「そう言う感想じゃなくて!」
求められているのは感想じゃなかったみたいだ。でも本当にソノ黒猫は可愛いと思ったのだ。四ツ葉の前で他の猫を可愛いって言うとヤキモチ妬かれるので言わないでいるが、私は小動物が大好きである。
城田くんが持つ猫を見詰めていると、さっきまで微動だにしなかった黒猫が
気だるそうに「にゃー」と鳴いた。
あら、可愛い。
君は自分がどのようにしたら可愛く見えるかが分かっているんだね。
…あ、そうだ。城田くんのよく分からない質問に答えないと。
…うん、猫だ。
「まず…どうって猫、だよね。ソレ以上でもソレ以下でも無いかと…」
「そうだけどっ…! いや、そうじゃなくって…!!」
何故か唸るように考え出す城田くん。
どうしたんだろうか。
「なんか真昼がゴメンね…Aちゃん…」
虎雪くんが申し訳なさそうに謝る。
私は「大丈夫」とだけ答えた。
城田くん、本当にどうしたんだろ?
…あぁ、そうか…。
「そっか、城田くん…疲れてるんだね…今日のクッキーの事とか…私が原因か…」
「ち、違うから! 無表情のまま落ち込まないで!」
否定をする城田くんだが、私は落ち込む。城田くんの言う通り無表情のままで。
「じゃあ悩み事? 一人で悩まないでね真昼…」
「相談しろって…」
二人が心配そうに訴える。城田くんは良い友人を持っているね、なんて婆くさい事を考えてしまう。
当の城田くんは「違う!!」と怒りながらツッコム。
本当の本当にどうしてしまったんだ。
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作者名:キタペン | 作成日時:2018年9月14日 18時