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賄い。
それは、店長がスタッフたちのためにあり合わせで作る料理。
ここサマーバケーションでは、1日に2回食べられるチャンスがある。
私は週に5日はシフトに入っているから、大体週10回。
つまり、私の半分は店長でできてるってことだ。
前にそんな話をしたら金指にドン引きされた。もちろん、店長の前ではこんなこと言わない。
今日の賄いはバターチキンカレー。
家で食べる味じゃない、本格的なスパイスの効いたやつ。
うちはドリンクがメインで食事の種類はそんなに多くないのに、毎回色んな賄いを作れる店長はすごい。
カレーだってメニューにはない。
ホールしか担当してない私には、これに入っているスパイスが店のどんなメニューに使われているかわからなかった。
こういう賄いもメニュー化すればいいのにと言ったことが何度かある。
うちはお客さんのほとんどが このビルの上で働いている人たちで、ランチのバリエーションが少なくて勿体ないって前に作間さんも言ってたし。
でも、そう簡単にお客さんに出すわけにはいかないんだって。
そういう、ちゃんと考えているところ、大好き。
「情けないね」
突然、しんみりした調子で金指がそう言った。
「どう考えてもさっきが絶好のチャンスだったのに」
『はぁー。男気しかない金指にはわかりませんよ、乙女の心は』
「閉店後に誘うチャンスがあるかどうかだね。
ま、頑張って」
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作者名:きたほ | 作成日時:2021年2月4日 17時