INNOCENT DAYS ４

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いつものピアノ教室。



今日はヨーロッパから、久しぶりに木崎さんが帰って来る日。





結局、例のデビューの話は木崎さんに相談する間もなく流れたけど、一応ピアノの件に関しては私の世話人みたいな人だし、報告しておかなくちゃいけない。



思い出すと気が重くなるし、木崎さんに相談しなかったことを叱られるかもしれない。



……そして、心配も掛けるかもしれないけど、もう終わった話だ。









ピアノ教室のある雑居ビルの玄関先に着くと、ちょうどタクシーから降りてくる木崎さんの姿。



ドライバーさんがトランクから出した大きなスーツケースを受け取ると、私の存在に気付く。



｢お、ただいま。｣



｢お帰りなさい。長旅お疲れ様でした。｣



木崎さんの自宅は、このピアノ教室も兼ねていて同じフロアにあるから、本当に今、帰国したところなんだろう。



だけどその表情は長旅の疲れを感じさせず生き生きとしていて、念願のヨーロッパでの演奏旅行が充実したものであったことが伺える。



｢いろんな土産話があるから、楽しみにしてて？それに……Aちゃんには、特別に大事な話もあるから。｣



大事な話？なんだろ………でも。



｢あの……私も木崎さんに報告しなきゃいけないことが………｣



そう言いかけた時｢木崎さーん、お帰りなさーい｣って声が道の向こうから響く。



もう1人のこの教室の講師、中島君が手を振ってこちらに駆け寄って来る。



「じゃあ、大事な話とAちゃんからの報告は後で。」



木崎さんが小さくそう私に告げた。








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帰り道。



今日あれから、休憩時間での木崎さんとの話を思い返す。



私からの事後報告は、予想通り「どうして連絡してくれなかったんだ？」って、怒られて………そして、とても心配してくれた。



業界での仕事も多い木崎さんは、やはり似たような話を聞きかじったことがあったみたいで。



「相談に乗ってあげられなくてゴメン」って。。。木崎さんが悪いわけじゃないのに。



そして、驚きを隠せなかった木崎さんからの“大事な話”



………………どうしたらいいんだろう、私。









帰宅途中に通った桜の公園。



朝とは違う、歩道の照明に浮かぶ桜の木のそばに停まってる黒塗りの一台の車から見知らぬ人が降りて私に向かって来る。



………誰？



「白石Aさんですね。」



そう言って差し出された名刺には、よく知ってる会社の名前が書かれていた。



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