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涙が零れないように、大きく深呼吸する。
ピアノの前に座る。
白い鍵盤を月の光だけが照らす、静かな部屋。
ずっと前に、高嗣に弾いたことのある曲を奏でてみる。
いつだったか、高嗣にしては珍しく仕事に対してほんの少し弱気な発言をしたことがあった時、、、ちょっとでも元気になってくれたらいいなって、気持ちを込めて弾いたんだ。
それは、月の光が静かに夜の闇を照らすような幻想的な曲。
太陽の様な眩しい光ではないけれど、いろんなことを包み込んでくれる穏やかで美しいメロディー。
この曲を弾くと、私も心が落ち着いて浄化されるような気がする。
このところ、コンクールの課題曲に追われていたから、久しぶりに弾いてみた。
高嗣の笑顔は、向日葵みたいで、青空と太陽の光が良く似合う。
でも、私にとって高嗣の存在は、穏やかで強くて優しい月の光みたいに感じる時がある。
心が折れそうなとき、そっと手を差し伸べてくれるような。
この曲を弾きながら、思い出す。
私が高嗣の笑顔に癒されるように、少しでも高嗣を癒してあげられるような存在になりたいって思った事。
大切な人に聞いて欲しくて、、、大切な人のためにピアノを弾ける喜びを、大切な人に聞いてもらえる幸せを、、、高嗣と出逢って初めて感じた事を。
気持ちが再びつながっても、またなかなか逢えない日々。
結局、私は何にもしてあげられないけど。
『眠れない夜に聞いてみて』
そんな一言を添えて、高嗣にメールを送った。
朝起きると、高嗣からおはようのスタンプとメッセージが来てる。
『夜まで待てなくて、朝だけど聞いちゃった!』って。
私が深夜に送ったメールは、日本では時差があるから届くのは朝。
この前電話した時に、このところ忙しいのにベッドに入るとなかなか寝付けないって言ってたから、そんなときに聞いて欲しいって思って、あの曲を録音して音声ファイルで送った。
だから“夜に”って言ったのに。
『起きなきゃいけない時間だったのに、ベッドの中でまた寝そうになっちゃった!』
そんなメッセージに、たくさんの絵文字が高嗣らしい(笑)
『ありがとう!』
『でも今度は動画がいい!』
『あ、でもそれみたらやっぱり眠れなくなっちゃうかも』
………だって。思わず笑っちゃう。
結局、いつも私が笑顔をもらってばかりだね。
早く………逢いたいよ。
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作者名:めろん | 作成日時:2020年8月6日 12時