INNOCENT DAYS ３

＊138 ページ41

.




その夜は高嗣のマンションに泊まった。



まだ薄暗い時間、、、枕元に置いたスマホのアラームで目が覚めた。



思ったより、ぐっすり寝ちゃったみたい。









今日は早めに起きて、自分の家に戻らないといけない。



コンクールは終わったけど、入賞者演奏会に備えてピアノも弾きたいし、着替えの用意とかもあるし。



ただ逢いたくて衝動的に来てしまったけど、、、でもやっぱり来て良かった。



ホッとして穏やかな時間を過ごせた。



昨日一日…ずっと緊張しっぱなしだったから、高嗣のおかげで安心してよく眠れたのかも。



そっとベッドを抜けようとしたら、、



「………Aちゃん？」



起こしちゃったみたい。



「ゴメン、、、まだ大丈夫だよ。」



いつもの高嗣は、寝起きはあんまりいい方じゃないのに、こういう時は敏感に目を覚ますんだねw。



ギュって腕を回されてベッドに引き戻されると、背中から抱きしめられる。



私のお腹に巻き付く長い腕。



首元に触れる唇。



背中に感じる温もり。





「もう、、、起きないと。」



「………まだいいでしょ？」



眠そうな高嗣の返事。



「だから、、、俺送ってくってば。」









昨夜からの何度かのやりとり。



「朝早いからタクシー拾うから大丈夫」


「仕事、午後からだから送ってく」


「そんなのダメだって。」……って言ってるのに。





結局あと少しだけ一緒にいたくて、、、背中に感じる甘い誘惑に負けたのは私だったけどw。






.







2人で簡単な朝食を済ませて「大丈夫だから」って言う高嗣の言葉に甘えて、家まで送ってもらった。



「今日は見に行けないから、せめてその位はさせて？」って……。



いいのかな？大丈夫？………でも、






ありがとう。









部屋で私がピアノの練習してる間、ソファーに座って聞いてる高嗣。



窓際に差し込む眩しい朝の光と、ピアノに反射して映ってる高嗣の姿。



高嗣の方を向いても、目を閉じてじっと動かない。



フフ……起きてるの？それとも寝てるの？






ふと、初めてこの部屋で高嗣を前にピアノを弾いた日を思い出す。




あの曲。




“二人の「時」はずっと昔から 見えない糸の様に繋がってたんだ ”





大好きになったあの曲の歌詞みたいに、、、大好きなオトを紡ぎながら、、、大好きな人のそばにいられる幸せ。





“言葉じゃ足りない感情”を、、、ピアノに込める。







今日も頑張れそう。



.

＊139→←＊137〜Side:2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す