#あの場所で ページ27
.
この時の私は
気づけなかった。
心を許せる誰かが
近くにいてくれるこの日常が
当たり前になってきていた時、
裏でうごめく黒い影が
着実に近づいていたことを。
とある潜伏任務。
敵国の国家機密を持ち出すという
極秘任務中、
誰もいない王の間の
ダクトに潜り息を潜めていた時
突然、
インカムが起動し
そこから声が聞こえた。
【 君は本当に優秀だね。 】
『 ! 』
聞き慣れない男の声。
思考を巡らせ、辺りを見回し
声の主を探す。
【 そして、可哀想な子だ。 】
『 …誰、 』
【 下だよ、下。 】
ダクトから部屋を覗くと
いつの間にか
見知らぬ男が立っていた。
『 っ!、 』
「 ご機嫌いかがかな。ミス・A。 」
急いでインカムを起動させ
その場を立ち去ろうとした瞬間、
「 おっと、下手な動きをしたら、どうなるか分かっているのかな。 」
『 …望みは何。どうして私を知っているの…? 』
私に向いている銃口は
いつでも撃つ準備はできている
とでも言っているかのようだ。
それよりも気になるのは
奴は誰なのか、
そして
なぜ私の事を知っているのか。
「 君は騙されているよ。最初から、何もかもね。 」
『 なんの話…、 』
「 君を助けた彼は、君を善意で助けたわけじゃない。やけに少ない幹部と、戦いになるとロボットの様に、意思を持たず同じ動きを繰り返す軍隊。おかしいと思わないかい? 」
『 …わからない。あなたが何を言っているのか。 』
「 あの国で何が起きているのか、知らないのか?では、告げよう。これは忠告だ。あの国では、極秘で人体実験を行なっている。実験体はすべての試験をクリアした幹部に “ なるはずだった ” 者たち。国が求めているのは強い戦力を持った体。 」
『 …っ、 』
「 心当たりなんて、探さなくたって思い当たる節は沢山あるだろう。消えゆく仲間、男のいない城下町、そして、国王以外に唯一、幹部として消えずに生き残り続ける一人の男。奴が黒幕さ。お前を救ったあの男こそ、本当の悪だ。 」
『 あなたは一体、何者なの…? 』
「 僕は_________ 」
.
188人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:*** | 作成日時:2019年8月5日 0時