愛しい君に降りそそぐ

千日紅 2 ページ31

F．




1週間、宏光とは連絡を取らなかった。

今日は金曜日。
仕事が終わった俺は、また俺知らないふりをして夕飯を作りに行った。


玄関のドアが開く音を聞いた俺は、玄関に小走りで向かい笑顔で宏光を出迎えた。



「おかえり」



彼は驚いた顔をしたあと、すぐに呆れた顔をして、深い溜め息をひとつ吐いた。

そのあまりにも嫌そうな顔が、もう俺に気持ちがなくなったのだと知らせているようで、俺はもう。



「なんで…っ」



思いきり膝から崩れ落ちた俺に、北山は困惑したように近寄ってきた。



「なんで浮気なんてするんだよ！
嫌なところがあったんなら言えばいいだろ！

別れたいなら、そう言えば…」


「違う！」



先程まで空中で彷徨っていた手で強く抱き締められた俺は、突然の行動に固まった。



「浮気したなんて、嘘なんだ。

お前はいつも我慢して本音を言わないから、浮気したと言ったら素直に本音を言ってくれると思った」


「浮気、してないの…」


「するわけないだろ！俺が好きなのはお前だけだ」



その言葉に、止まっていた涙がまた溢れ出した。



「わがまま言ったら、嫌われると思った…」

「そんなことあるか！もっとわがまま言ってほしい」



全部自分の思い過ごしだった。

それに、宏光が変わらず俺を愛してくれているという事実が何よりも嬉しくて、涙が止まらない。



「おい、目擦るな。腫れるだろ」



笑顔を向けられると尚更、涙が出ちゃうんだ。



「わがまま、言ってもいい？」

「何でも言って」



優しく諭されるように、髪の生え際にキスを落とされる。

その次は瞼に、目尻に、頬、鼻、
そして、唇に温かい温度が伝えられた。


もう、強がるのはやめる。
彼はきっと弱さも受け止めてくれるだろうから。



「ずっと、傍にいてください」



彼はくすりと笑って、



「俺もわがまま言っていい？


ずっと隣で笑顔も泣き顔も怒った顔も、

全部俺だけに見せてください」




返事はもちろん、



「はい！」




END．

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千日紅の花言葉は「色褪せぬ愛」

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