愛しい君に降りそそぐ

これは夢なのでしょうか 1 ページ21

りん様リクエスト

2．(KF要素薄め、2Fあり)




いつもの朝。
いつもの道。

本当であれば、
ここに『いつもの楽屋』が入るはずだった。


今日は目覚めが良い朝で、
早いに越したことはないと、
いつもより少し早めに楽屋入りをした。

…するはずだった。



「…っきたやま…だめだって…」

「いいだろ別に。こんな早く誰も来ねえって」



この声が聞こえるまでは。



「今日は早く来るかも知れないだろっ…！」

「いいからほら…ﾁｭｯ…黙れって」

「…んっ…ずるい」



この声の主は、
北山さんと藤ヶ谷さんだ。

普段はあまり絡まない二人が…
明らかにキスをしている。


ど、ど、どうしよう！？


…なぁーんて。
引っ掛かるほど馬鹿じゃないんだぜ、俺は。

これがドッキリってことはわかってるんだぜ。


だから俺は、ニヤニヤした顔で思い切りドアを開けた。

そこでやはり自分の馬鹿さを痛感するとは知らずに。



「はっはーん！俺にドッキリを仕掛けるなんざ、ひゃく…ねん」

「あ、ニカ！？」

「ありゃりゃ、藤ヶ谷の勘が当たっちゃったな」



何と、本当に、キスをしていた。

俺は驚きに固まるが、
必死にネタばらしをしてくれる誰かを待っていた。

だが、待てど暮らせど来ないではないか。


楽屋はしんと静まり返っている。



「えっと…二人は…付き合ってるの？」



その沈黙を破ったのは俺だった。

だって、賑やかが好きな俺にとっては、
こんなに静かな空間が耐えられなかった。



「付き合ってねえよ」

「え、じゃあ何でキスしてたの」



俺の言葉にミツは押し黙った。

また少しの間沈黙が流れる。
それを破ったのは、今度は俺ではなくガヤだった。



「はい！この話はお終い！そろそろみんな来ると思うから」

「ああ、そうだな」



二人が会話を交わす中、俺は納得出来ずにいた。


それは、
恋人でもないのに、キスをしていた二人に対して？

それとも、
俺の質問への答えをはぐらかされたことに対して？


…残念ながらどちらも違う。


俺がこんなに、心がモヤモヤして止まないのは、

そう、


ガヤのことが好きだからだ。


それは、メンバーとしてでもあり、友達としててでもあり、
一番大きいのが、恋愛感情だった。



「はぁ…」



小さく溜め息を吐くが、
その音は横尾さんがドアを開いた音に掻き消され、
誰も気に留めてなどいないはずだ。


だから俺は、気付かなかった。

ガヤが唇に緩い弧を描いていたことに。




．

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